yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

“社会主義リアリズム作曲家”ハンス・アイスラー『作品集』LP3枚組み。戦前作品のみは評価できる。瑞々しくすぐれた12音列作品。

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Hanns Eisler - Nonet No.1:32 Variationen über ein fünftaktiges Thema

           


              ・・・天上の神々が
      すべてをなし能うのではない。すなわち
      まず人間たちが深淵に至るのだ、そうして
      その者たちが転回する。
      その時期は長い、
      しかしまことのことは起こるのだ。
                ヘルダーリン「ムネモージュネ」

世界の夜という乏しい時代は長い。その夜はまず長時間を経て、その本来の中心へと至らなければならない。この夜の深夜に至れば、時代の乏しさは最もひどい。そこにおいては、この欠乏の時代は、その欠乏を経験することすらできない。乏しいことという欠乏をさえ無理解の暗黒へと追いやってしまうこの不能、それこそがまさしく時代の乏しさなのである。この欠乏は、ただ単に満たされんことを欲しているような欲求という現れかたをすることによって、完全に正体をぼかされる。しかしそれにもかかわらず世界の夜は、厭世観楽天観との此岸で起る時運として考えうるのである。おそらく今、世界の夜はその中心に向かって進みつつある。おそらく時代は、今や完全に乏しき時代になりつつある。しかし、おそらくはまたそうではない、まだそうなってはいないのである。はかり知れない困難、ありとあらゆる苦悩、名づけようもない苦痛、はびこりつづける落着きのなさ、たかまりゆく混乱にもかかわらず、まだ依然としてそうなってはいないのである。それ自体転回の根拠として考えられる恐怖でさえも、人間が転回しない限りは、何一つなしえないがゆえに、この時代は長いのである。
                       M.ハイデガー「乏しき時代の詩人」(理想社版)より

イメージ 2またまた北京オリンピックのテレビ中継に夢中になってしまった。サッカーのなでしこジャパンにはじまり、女子ソフトボール。残念ながら、なでしこは健闘するも力及ばずの敗退で4位で終わったけれど、ソフトは見事一位金メダル獲得。常勝アメリカを撃ち破っての勝利は見事だった。おめでとう。サッカーのほうは、いつも同じことばの繰り返しになるのだけれど、個人の技量、スピーディなドリブルとトラップ、パワー、体幹の強さの差を、とりわけ、ペナルティーエリア付近での、ここぞという動きの果敢さ、落ち着き(=自信・決定力)など毎度毎度見せ付けられ、歴然とした力の差をみせつけられた。この差は思う以上に大きいようだ。綺麗なサッカーであっても勝ちきれないサッカー。さて、本題の音楽ブログに話しを振ろう。

・・・まったくもって、宝のもちぐされとはこれを謂うを地でゆくようなものの紹介となるのがきょう取り上げるハンス・アイスラーHanns Eisler, 1898 - 1962)のアルバム。制作レーベルのドイツ・WERGOのサイトを覗いても、またネット検索をしても、検索仕方が悪いのかもしれないがまったくデータが出てこない。LP3枚組みというヴォリュームで出されているにもかかわらずだ。これはどうしたことか。このネット時代なんらかの情報が網にかかってもよさそうなものだけれど・・・。と謂うわけで中途半端なままでの投稿を控えるのが本当なのだけれど、たぶん時間をかけてもさほど情報不足の事態は変わりは無さそうだとの思いもあり、見切り取り上げてしまった。現代無調音楽の革新の扉を開いたシェーンベルクの弟子、アルバン・ベルク、アントン・ウェーベルンと同様にその名を連ねるハンス・アイスラー。たぶんその政治的、イデオロギー的立場(社会主義リアリズム)ゆえの音楽史での扱いもあって、その評価を曖昧、劣位にしているのは間違いないところだろう。少なくとも、聴いた限りでは、その12音列による作品はいい作品が多い。とりわけ、戦前の作品は美しく且つ引き締まったセンス溢れる、すぐれた12音列作品イメージ 3をのこしているようだ。ただ戦後の彼の音楽は、精神の弛緩が感ぜられるつまらない作品が多いように思うが、さてどのようなものだろうか。ここいらのことは追々調べて行くことを課題としてこの記事を擱えよう。



収録曲のネット検索不全・・・―
「フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための変奏曲」(雨を描写する十四の手法)(Op 70) (1941)
 ロックフェラー基金の助成により作曲。1944年ロサンジェルスシェーンベルクの家で70歳の記念に初演された。

「15の楽器のための室内シンフォニー」(Op69)(1940)

zeitungsausschnitte (1926) {vo, p}
Sonate für Klavier Nr. 2 op. 6 (abgeschlossen 1925)


http://eislermusic.com/tour.htm アイスラー試聴サイト
http://eislermusic.com/lifeline.htm EislerMusic.com (英語。Music>Virtual Tour with RealAudio Samples で38曲を試聴できる。北米アイスラー・フォーラム公式サイト)

参考リンク―【アイスラーとアドルノ



Hanns Eisler: Palmström, Op.5 Studies on 12-tone rows (1924). On texts of Christian Morgenstern.