yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ハインツ・ホリガー「7つの歌」(1966-67)「魔法の踊り手」(1964-65)。精神の緊張をその緻密な音色展開、音響造形の厳格のうちに、堪能することだろう。

イメージ 1

heinz holliger

          

イメージ 2きのうは、ヨーロッパ的な構成感覚からは対極ともいえなくはないエキゾティックで情緒的なトーンをもって世界を駆け上った武満徹のCDを取り上げた。
ということで、今日はヨーロッパの音楽伝統をきっちりと踏まえての前衛作品、もちろん作曲年代が60年代ということで、戦後セリエールの動きの範囲を出ているものではないけれど、シェーンベルクに象徴される表現主義プラス、ブーレーズ的な音色感覚と構成の厳格で、緊張感溢れる秀作となっているハインツ・ホリガー(Heinz Holliger, 1939 - )のアルバムを取り上げよう。
このホリガーはいうまでもなく、オーボエの名手としてつとに知られた演奏家であるのはクダクダしく言うまでもないことだろう。それも古典から現代音楽までとオールマイティに手掛けるそのエリアは広い。だが、作曲家としても、このアルバム収録作品のように、一級の秀作品を発表していることはあまり知られてはいない・・・と思われる。
それに、年代を経るにつれ、すなわちセリエールの限界・閉塞を突き破る試みには意想外のアヴァンギャルドに驚かされる作品を書いている。古典的な演奏の堅実秀麗さからはおよそかけ離れた突出ぶりといえる。
以前拙ブログで≪惰性の美学の安穏に揺さぶりをかける、荒涼とした冷えの情熱の世界ハインツ・ホリガー『弦楽四重奏streichquartett』(1974)。≫とタイトルして取り上げた作品こそその類いといえよう。
その記事でも記しているけれど他の古典的ともいえる収録作品≪他に、ヘルダーリンの詩句を扱っての合唱曲『Die jahreszeiten』(1979)とチェロ独奏曲の『Chaconne fur Violoncello solo』(1976)が収録されている。このあとの2作品は弦楽四重奏作品ほどには仰天の作品ではなく、かっちりと作り上げられた作品で、チェロ独奏曲など聴くともうこれは日本人には到底出来ない、書けない作品だなと思える作品である。情緒をとことん突き抜けてしまっている。しかしチェリストは弾いてみたい作品なのではないか知らんと思うような、精神の緻密を感じさせる作品だと私には思える。凝縮緻密の世界、スゴイものです。≫といった印象は、今日のアルバム収録作品にもいえるのではないだろうか。
戦後セリエールの音楽史的成果、その極致ともいっていいブーレーズの傑作作品を聴いた時のような、精神の緊張をその緻密な音色展開、音響造形の厳格のうちに堪能することだろう。こうした構成の厳格、その上での緻密な音色展開の見事さ≪「日本人には到底出来ない、書けない作品だなと思える」≫を目前に突きつけられると、最初の話に戻ることになるけれど、情緒的なと言ってもいい武満トーンは対極の異質といえるだろうか・・・。


収録作品――
「7つの歌 ―オーボエ管弦楽、歌声とスピーカーのための―」(1966-67)
「魔法の踊り手 ―2人の人と2つのマリオネットのための脱走の試み」(1964-65)