yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ガンサー・シュラー「THE INVENZIONI」ほかとブルーノ・マデルナ「GIARDINO RELIGIOSO」 (1972)。音列を踏まえた音色的にも多彩で伸びやかな現代音楽。

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Gunther Schuller String Quartet No 2 Third Movement

              

        ガンサー・シュラーの公開作品――
        http://artofthestates.org/cgi-bin/piece.pl?pid=329 「Phantasmata」 (1989)

イメージ 2このブログでもジャズのジョン・ルイスオーネット・コールマン、それにドン・エリスなどを取り上げたさい、ジャズとクラシックの融合ということで『The Third Stream(第三の流れ)』ということばが出てきた。その当の先導旗振りのひとりが、きょう音盤としては初めての登場となるガンサー・シュラーGunther Schuller、1925 - )。実際にジャズメン(マイルス・デヴィスやジョン・ルイス)との共演や、その分野での教育・研究にと、ジャズへの思いと造詣は深く、自身の音楽形成にも大きな要素として自覚的に採り入れられているのだそうだ。というものの、たぶん保有するたった一枚のアルバムだったはず。事情は何か折衷的で胡散臭さを抱いていたのだろうか。ルチャーノ・ベリオの盟友であり、兄貴分であったイタリアの現代音楽作曲家であり指揮者のブルーノ・マデルナの作品が収録されていなかったらたぶん手元に置いていなかっただろう。このガンサー・シュラーは、小沢征爾も深く関与していたアメリカの大きな現代音楽の催し「タングルウッド音楽祭 Tanglewood Music Festival)の主催者のよし。保守的な音楽新興国アメリカでの現代音楽の推進者の一人というところなのだろう。作曲は独学と謂うこともあってかアカデミックな保守的傾向からは免れて、ジャズのみならず、十二音列書法、それに偶然性、即興演奏などの音楽史上での新傾向を果敢し、柔軟な感性で作曲、音楽活動をエネルギッシュに展開しているといえるのだろうか。似たタイプでルーカス・フォスなる作曲家を幾度か拙ブログで取り上げている。こちらは純然たるヨーロッパの(音楽)教養(生まれがドイツ)に裏打ちされた革新音楽といえるものだが。さて、今日取り上げるアルバムは、先のタングルウッド音楽祭に2度参加しガンサー・シュラーとも交流のあったブルーノ・マデルナへ献呈されているとのこと。彼の亡くなる前年に作曲された「GIARDINO RELIGIOSO 宗教的な庭」 (1972)がガンサー・シュラーの指揮により初録音されている。この作品は不確定、偶然性のファクターをその作品書法に採り入れられた曲だそうだけれど、それゆえと謂うことなのか、マデルナ作品に抱く音色の煌めき、美しさが流麗な音列のうえに響きわたる。指揮者ガンサー・シュラーの柔軟な感性、力量も与っているのかもしれないが。マデルナの生前、彼とのこの作品に関してのやり取りからパフォーマンスにはそれら作品解釈が反映されているとのことだけれど、たしかに満足のいく演奏だったのではと思わせる良い演奏だ。あとの2作品はガンサー・シュラーの作品。「THE INVENZIONI」と「CONTOURS」。『The Third Stream(第三の流れ)』に幻惑されない方がいい。むしろ音列を踏まえた音色的にも多彩で伸びやかな現代音楽として聴くことだろう。モロにジャズイディオムなどを使わないところがこのガンサー・シュラーの柔軟で優れたところといえるのだろう。最後に、「CONTOURS」では雅楽の響きが壮麗に出てくるのは驚きだった。好みとしていえば、作曲家としてのバーンスタインよりは作曲センスは良いとしてこの稿擱くことにしよう。




GUNTHER SCHULLER: Trio for Violin, Cello and Piano: Finale THE IBIS CAMERATA