先日、ダーウインの適者生存なる、極端に言えば弱肉強食の進化論ではなく、
今西錦司いうところの棲み分け(ニッチ)が、生物の発する音にも見られるという記事を投稿した。以下のごとくだった≪ところで、この<棲み分け>が生物世界の≪住処と食料だけ≫ではなく≪
音響学者バーニー・クラウス Bernie Krause (1938 in Detroit, Michigan)(ちなみにこのバーニー・クラウスは
ビートルズの
ジョージ・ハリソンが制作した「
電子音楽のみの作品「
電子音楽の世界Electronic Sound」のアシスタントメンバーとして参加のよし。このたびWIKIを覗いていて知りました。)は、高性能録音機材をボルネオの
熱帯雨林の奥地に持ち込んで、そこに存在する音をすべて録音した。データを持ち帰り、横軸に時間、縦軸に周波数をとって解析してみた。するとグラフには互いに重ならない、たくさんの縞模様が現れたのだ。一体どういうことだろうか。自然界では、音についても
ニッチがあるという大発見だった。梢を渡る鳥の高いさえずり、木々の間を行き来するサルの呼びかう声、虫たちの低いさんざめき。彼らはそれぞれ自らの分を守り、お互いの干渉をできるだけ避け、音のレベルでも棲み分けているのだ。クラウスはこれを
サウンド・スケープ(音の風景)と呼んだ。≫(日経・10・2夕刊、
福岡伸一「
サウンド・スケープ」)≫ということで、さっそく、当の≪
サウンド・スケープ(音の風景)≫を味わうべく図書館でのネット借受を利用し聴かせてもらった。もちろんアルバムは、先の音響学者バーニー・クラウスのフィールドレコーディングしたCDで、タイトルは『African Adventures』(1994)。アフリカの≪
ケニアにある野生動物たちの水場で繰り広げられる24時間のドラマを音で綴る。≫とある。地平線に朝日が昇り生き物目覚め活動し、そして陽が沈み夜の帳の静寂に包まれてゆく
サウンドドラマが時系列で編集されている。それともう一つは≪東アフリカ中央部に位置する
熱帯雨林の高地にある保護区域に生息している≫ゴリラの一日の生活を生きているサマ(日常)を
サウンドで覗こうという趣向。言うまでもないことだけれど、動画像のない音のみの鑑賞ゆえか、聴覚研ぎ澄まされ音の輪郭がクッキリとして生々しく迫り、それがゆえ想像力をかきたてる。生きてある存在の証とばかりに鳴き声が、音が、自然界を行き交うのだ。まさしく、
先日も引用し、この記事の先頭に再引用した
自然は長い沈黙を嫌うを想起させるのだった。音は遍く存在する。沈黙には、いやその沈黙にすら音が詰まっているとは、あの究極の音楽作品「
4分33秒」をダダした
ジョン・ケージだったか、「
音、沈黙と測りあえるほどに」の音に乾坤余韻究めんとした
武満徹だっただろうか。
<蛙 声>
天は地を蓋(おほ)ひ、
そして、地には偶々(たまたま)池がある。
その池で今夜一と夜さ蛙は鳴く……
――あれは、何を鳴いてるのであらう?
『アフリカン・アド
ベンチャー African Adventures』
1. 水場の箱船
2. ザ・グレイト・ゴリラ
Migaloo the White Whale Speaks