yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

OBSCURE №5 『JAN STEELE AND JOHN CAGE』(1976)。音の過剰でないぶん何か弱々しく、やるせない。けれど居丈高でないだけ心穏やかに音楽に耳傾けることができる。

イメージ 1

John Cage -Six Melodies

           

シンプル・イズ・ベスト Simple is (the) best。こんな言葉が巷に流れていたのは70年代のことではなかっただろうか。検索サイトが使えず確かなことは分からないが。今日とりあげるアルバムを聴いていてそのことがまず思い出された。それと、幾度か投稿記事中で載せているけれどエリック・サティの言葉に

「ねえレジェー、皆自分たちのしたいことをちょっとやりすぎると、君は思わないかい」

ということばも思い出される。そしてまた、構築的なゴテゴテした音楽を嫌った武満徹のこんなことばもあった。

「私は音を組立て構築するという仕事にはさして興味をもたない。私は余分を削って確かな一つの音に到りたいと思う。」

たしかにどこかの対談記事で武満徹が、私はマーラーのような音楽は興味がないといっていたと記憶するが・・・。仰々しさが、ウソ臭かったんだろうと察するのだが・・・いや、それとも今さらということであったのかもしれない。。私もそのタチだ。私の極北はいうまでもなくウェーベルンだ。仰々しい過剰な音楽を聴いていると、なかば呆れ、なにを粋がっているの?とつぶやいてしまう。好き嫌いと言うものがありますから誰とはいいません。時代が要請した音楽・芸術形式だからそれ以上のことはいわないでおこう。今日のアルバムのような最小限の要素(ミニマル)、音で作られた音楽は、何か弱々しく、やるせなく切ないのだけれど、居丈高でないだけ心穏やかに音楽に耳傾けることができる。



OBSCURE №5 『JAN STEELE AND JOHN CAGE “VOICES AND INSTRUMENTS”』(1976)

以下はネットサイトのコピーペースト(アルバム裏面、凡そが分かる自動翻訳?英文の和訳)です。

Side 1
Jan Steele “All day”
■ジャネット・シェルブーン:ヴォイス■ステユアート・ジョーソズ:ソロ・ギター■フレッド・フリス:ギター■ケヴィン・エドワーズ:ヴィブラフォン■スティーヴ・ベレスフォード:べース・ギター■フィル・バックル:パーカッション
“Distant saxophones”
■ジャン・スティール:フルート■ウタコ・イケダ:フルート■ドミニク・マルドーニイ:ヴィオラ■スティヴ・ベレスフォード:べース・ギター■マーティン・メイエス:ピアノ■アーサー・ラサフォード:パーカッション
“Rhapsody spaniel”
■ジャン・スティール&ジャネット・シェルブーン:ピアノ
Side2
John Cage“Experiences no. 1”
■リチャード・ベルナス:ピアノ・デュエット
“Experiences no. 2”
■ロバート・ワイァット:ヴォイス
“The wonderful window of eighteen springs
■ロバート・ワイァット:ヴォイス■リチャード・ベルナス:パーカッション
“Forever and sunsmell”
カーラ・ブレイ:ヴォイス■リチャード・ベルナス:パーカッション
“in a Landscape”
■リチャード・ベルナス:ソロ・ピアノ
■ロンドン、ベイシソグ・セント・スタジオにて録音■エンジニア:レット・ディヴィス、ガイ・ビッドミード■プ□デュース:ブライアン・イーノ1976

これら3作のスタイルは、即興演奏のグループ、F&W Hattとの共演を通じて生み出された。F&W HATTは、1972年ヨーク大学で、ジャン・スティールと、ピアニストのデイヴ・ジョーンズ、フルート奏考のマイク・ディーンによって形成された。このグループは、即興的な、ロツクを基とした音楽を、とても静かに反複して演奏する、ということを目ざしていた。この方面は、ある程度、これらの作品にも残っている。
“ALL DAY”(ジェイムス・ジョイス“Chamber Music”より。1907、№xxxv)
 “ALL DAY”は、1972年のヨーク大学ポップミュージック・プロジェクトのために書かれた。これは、ドビュッシーのオペラ、“Pelleas et Meltsande”の研究の結果、生まれてきた。詞の使い方も、その直接的な結果である。詞は、ジェイムス・ジョイスの詞による。ハーモニイと、全体的なスタイルは、やはりF&W Hattのプレイから出て来ている。構成としては、ギター・ソロの間奏曲を含む、12小節のブリーズである。
 これは最初、教訓的な作品として作曲された。危機に直面した即興音楽のようなものを描こうという企てであった。1972年に、F&W Hattにより初演。ヴィオラ・ソ□のドミニク・マルドーニイに撲げられている。
“RHAPSODY SPANIEL”
  これも最初は、F&W HATTのための曲として生まれかけたが、それはならず、1975年4月に、連弾曲として完成された。
 ケイジの現在までの活動は、べ-トーベンのように、3つの時期に分けることができる。
 彼は、その中期の音楽と美学によって、最もよく知られている:偶然に支配される進行、あいまいさ:音と作曲家と演奏家と聴き手とを、伝統的なステロタイプと制限から解放すること。雑音の承認、周囲の音を音楽の中に取り入れること、等々。この時期は1950年から69年まで続く。
 ケイジは、1948年8月に、ノースカロライナ・ブラックマウンテン大学での夏期講座で“Experiences№1”と“Landscape”の初演を行った。この講座で彼は、Satieの諸作を紹介(そして、正当化)したが、その中には彼自身がその初期の音楽の中で発展させてきた、構成の手法の十分な説明が見いだされる。ケイジは、こう言っている。「構成という分野、即ち、各々のパートと全体との開係という分野では、べートーベン以来、新しい考え方はひとつしかない。べートーベンに於ては、ある作品のひとつの部分は、ハーモニイという事によって限定される。SatieやWebernに於ては、それは、時間的な長さ、という事によって決められるのだ。べートーベンは、作曲にとりかかる前に、あるキィから別のキィヘの移動という事をまず頭にお<。つまり彼は、和声的な構成という事を考える。Satieは、そのフレーズの長さという事を考えるのだ。
 これは、実のところ、ケイジ自身の手法でもあった。

 “In Landscape”は、5曲中最も長<、ケイジが30年代から40年代にかけて発展させてきたリズム構成の、最も一般的な形である。
 この作品で、ケイジは、15×15(5・7・3)という構成をとっている。つまり、この作品は、15小節から成るセクションを15個持ち、全体は、5セクション、7セクション、3セクションという3つの群に分かれている。同時に、より小さなスケールでも、各々のセクション中の15小節は、やはり、5・7・3個という3つの群に分かれている。このリズム構成の原理は、ケイジの初期の音楽的な業積の一例である。メロディ的には、5つの作品は全て、制限され(限定され)た音階を使っている。

 “Experiences №1”は、3台のピアノで、Aマイナー風の5音階、ACDEG、を使っており、“№2”.は、これに従っている。
 声とピアノのための曲、“The Wonderful Windw of Eighteen Spring ”は、1942年に書かれた。ケイジは、この曲では、どんなリズム構成も手法も、意識的には使っていないと言っている。このメロディラインと、その打楽器的な伴奏は、全て、テキスト(詩)の印像に基いている。ピアノは、打楽器のように扱われている。ピアニストは、グランドピアノを閉じる(弦の部分も鍵盤の部分も)ことを要求され、普には、ピアノのどの部分を、どちらの手の、どこで打つか、という事が表記されている。声の演出も、ヴィヴラートを使わず、メロディも、単純にABEの音を入れ替るだけで成り立っているが、無理のない音域を使うことができるように、歌い手は、自由にキィを変えてよいことになっている。

 2種のパーカッションを伴う歌、“Forever and Sunsmell” も1942年に書かれたもので、e・e・カミングスの詩に曲がつけられている。使われている打楽器は、2個の大きなトムトム(最初はティンパニのスティックで、のちには指で打つ)と、少な<とも直径24インチはある、中国のドラ。

 “Experiences no. 2”
 e・e・カミングスの“Sonnets-unrealities of Tulips and Chimneys”のひとつ、Ⅲをテキストにしている。最後の2行は省略。
 他の行や詞は、くり返されたり、原詩とは違う順序で使われたりしている。

 “The wonderful window of eighteen springs
 (この歌の詞は、ジエイムス・ジョイスの「フィニガンのめざめ」556ぺージの改作)

 “Forever and sunsmell”
 タイトルとテキストは、e・e・カミングスの“50poems”(1940)中のひとつ、“26”、による。いくつかの詞と行は省略。そうでない部分は、原詩とは違う順序で使われたり、くり返されたりしている。ハミングや声は(詩の一部ではなく)加えられたもの。

JAN STEELE
 
1950年11月8日、バーミングム生まれ。ギルドハム音楽学校で、,ホール・グリフィスに、後にはエイヴリル・ウィリアムに、フルートを学んだ。1969~70年、ロンドン大学キングス・カレッジで、1971~74年、ヨーク大学で音楽を学んだ。
 現在、ベルファーストのクイーンズ大学社会人類学部にて、ジョン・ブラッキング教授の下で民族音楽学を研究中。


Jan Steele / John Cage 『Voices And Instruments』(1976)



Jan Steele + John Cage | All day | 1976 Obscure No.5