yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

マウリシオ・カーゲル『ACUSTICA』(1971)。身近にある、簡単な電子機器もふくめて様々なありふれた道具、ガラクタを楽器として使用しての即興コレクティヴパフォーマンス。まさにアコースティック。

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Acustica:Apartment House perform Kagel's Acustica at LSO St. Luke's, London as part of the Cut and Splice festival

           

イメージ 2さて今日は飛びっきりアヴァンギャルド、奇矯なパフォーマンス、ハプニングを伴う音楽でその名を轟かし、斯界に驚きと憤激、唖然嘲笑!、賛嘆?の毀誉褒貶激しく、お騒がせの、つい最近物故された名物作曲家、マウリシオ・カーゲルMauricio Kagel(1931 - 2008)に登場していただこう。前もって電子音楽スタジオで作成された音源のテープと、身近にある、簡単な電子機器もふくめて生活のための様々なありふれた道具を、音の発する楽器として使用しての即興コレクティヴパフォーマンス。奏者は5人。それらが会場のスピーカーより流されるという仕組みの作品?のよし。もちろんどの楽器を選択し音を鳴らすかの指示が記された200ほどのカードファイルからのチョイスは奏者に任されているということから、組み合わせ順不同ということで不確定、偶然の要素がそのパフォーマンスを演出するというわけだ。大雑把に言えばそこいらにある生活用品等々のガラクタを音源として使いプロフェッショナルな演奏家が相互感応的に即興演奏したアルバムといえようか。タイトルの『アクースティカACUSTICA』(1971)とは、いうまでもなく、アコースティック(=電子変換を伴わない生の音)のもじりと思われるけれど、そこには皮肉を込めた内実を示していると言えるのだろうか。あり合せのガラクタの発する音こそが<生・き>の音であり、その語義にふさわしいといっているように思われる。ただ印象としては、前もって電子音楽スタジオで制作されたテープ音楽(電子音楽)が、アコースティックなガラクタ道具楽器のパフォーマンスのバックに同時並行的に流されていなかったらどうなのだろう。全体の印象ではこのテープでの電子音楽が流されていなかったら、さほどオモシロくもない散漫な締りのないパフォーマンスで終わっていたのではないかと思われるが。従来の楽器音ではとうてい聴けないサウンドで、しかも楽器のスペシャリストがイマジネーションの限りを尽くして相互感応の音響空間を作り上げているのは刺激的で、一度は聴くにあたいする音源といえるのでは。自らも即興演奏の可能性を求め70年代果敢していた作曲家で、トローンボーンの名手ヴィンコ・グロボカールがこの『ACUSTICA』に参加していることをとっても、このパフォーマンスがユニークでオモシロくなかろうはずはないと思わせるし、事実、あそびと音楽性の満ちた風変わりな即興音楽作品となっている。

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『Acustica』(for experimental soundproducers and loudspeakers)2枚組み

Kölner Ensemble für Neue Musik

I. Christoph Caskel
II. Karlheinz Böttner
III. Edward H. Tarr
IV. Wilhelm Bruck
V. Vinko Globokar

Formation of the palyers during recording session:

    III

  II    IV

I         V


興味のある方は下記サイトにて音源すべてが聴けます。
http://www.ubu.com/sound/kagel01.html UbuWeb Sound ACUSTICA for experimental sound-producers and loud-speakers


マウリシオ・カーゲル関連、投稿済み記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/49715429.html もの哀しく、ノスタルジックに奏でるベートーヴェン作品のコラージュ。マウリシオ・カーゲルMauricio Kagelの『Ludwig van』

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/33558805.html 不分明な差異の戯れの音響世界に奇妙な印象を残すマウリシオ・カーゲルの 『ヘテロフォニー』(1959-61)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/29710047.html デヴィッド・チュードアの特筆の名演奏で聴くマウリシオ・カーゲルの奇矯なパイプオルガン曲