yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

オリヴィエ・メシアン『彼方の閃光 Eclairs sur l'Au-dela』(1987‐91)。音として聴くことなく逝った絶筆「白鳥の歌」。信仰篤きまなざしの真摯を思わないではいられない固有の世界。

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Olivier Messiaen - Éclairs sur l'au delà... (1987-1991)

           

イメージ 2きょうもまたと言うべきか、先日仕事終えての帰宅途中に、自動車のFM放送からたまたま流れていた作品(聴くことが出来たのは真ん中の一部だけだったけれど)を、たぶんと推量しつつも帰宅後ネット検索で確認したところ、やはり想っていた通りメシアンの作品だった。なんでも今年2008年はそのオリヴィエ・メシアン Olivier-Eugène-Prosper-Charles Messiaen(1908 - 1992)の生誕100年にあたるそうで、道理で今年はよくメシアンの聴く機会が多かったように思った。もちろん言うまでもなくNHKのみで、だけだけれど。いうまでもなく!民放なんて話題にもしないが。で、それを聴こうと中央図書館のネットを利用、たまたま所蔵されていたので借り受けた。それがきょう取り上げる『彼方の閃光 clairs sur l'Au-del』(1987‐91)。≪この作品はニューヨーク・フィルハーモニックから1992年の創立150周年を記念して委嘱され、同年に作曲された。初演はメシアンの死の6ヵ月後、同年11月5日に、ズービン・メータの指揮によって行なわれた。≫(WIKI)とあるように老体?に鞭打って渾身の生命をそそぎ込んで作曲されたとおぼしき絶筆≪白鳥の歌≫とされている。メシアン本人はこの演奏時間60分という長大な曲(総スコアー300ページ超)を音として聴くことなく身罷ったということになる。それにしても、いつも思うことだけれどこのメシアンは特異な、孤立したポジションにあった作曲家だったとつくづく思う。戦後、無調、トータルセリエールをスタートにさまざまな革新の意匠で形づくられた音楽のトレンドにおもねることなく独特のリズム、音色追求をもって作曲活動をゆるがせにしなかったことは特筆ものと言えるのだろう。けれど、そのような対応力、革新性がなかっただけ、つまりは時代への乗り遅れと言う辛らつも耳にしないわけではないけれど。だが、そうとも言い切れない不可思議な魅力を備えた独特のリズム(自然がもつリズム)と音色で彩られた作品には、これぞ!メシアンといいたくなる独自の香りと光を放っている。信仰心厚い作曲家であり、その独特の色彩感覚に彩られた音色に漂う宗教的といってもいい神秘性は、その篤きまなざしの真摯を思わないではいられない固有の世界といえるのだろう。
まさにわが道を行くメシアンといったところだろうか。

あらゆる鳥の鳴き声を採譜し、それをリズム、音楽探求の糧としたメシアン

以前拙ブログで次のように記した。

≪ところでメシアンのこうした鳥だけではなく、自然からリズム、音楽語法の探求を飽くことなくしつづけていたことに対してブーレーズは次のように言っている。以下は拙ブログからの引用である。
【彼(オリヴィエ・メシアン)の音楽の「例外的な強靱さはリズム、つまり時間概念にあった」。こんにちの音楽における「リズム概念の革新の重要さを私たちに理解させたのがメシアンであり、その根源に《春の祭典》があった」とブーレーズが言う。・・・・・「彼は鳥の鳴き声、岩山、風景、色彩、山々といった自然からインスピレーションを受けたのではない」とブーレーズは続ける、「そうではなく、彼はそれらが語るものをそのまま音楽に移し換えたのだった(…)メシアンにとって音楽とは、そうした宇宙的な現象の一環であり(…)、作曲とは、そもそも<コンポジット>(組み合わせ)という言葉を内包する作業だった。メシアンは自身の複雑な音楽思想の彼方に子供のような新鮮さとあらゆることに感動できる感性を持ち続けることに成功した。」≫(「音楽の友」1992)これらのことばは、オリヴィエ・メシアンにたいする、優れた思想的批評家でもあるブーレーズの見方である。このことばを目にし、ふとジョン・ケージの≪子供の時に子供でいるより、大人になって子供になるほうがいい。≫ということばを思い出した。そこでこそ露わになり、より見えてくるものがあるということだ。】≫



Olivier Messiaen『彼方の閃光Eclairs sur l'Au-dela』(1987‐91)

1.栄光あるキリストの出現 - Apparition du Christ glorieux
2.射手座 - La Constellation du Sagittaire
3.コトドリと結婚の街 - L'Oiseau-lyre et la Ville-fiancée
4.刻印された選ばれし者 - Les Élus marqués du sceau
5.愛にとどまる - Demeurer dans l'Amour ...
6.7つのトランペットと7人の天使 - Les Sept Anges aux sept trompettes
7.そして神はことごとく涙をぬぐい去ってくださる - Et Dieu essuiera toute larme de leurs yeux ...
8.星々と栄光 - Les Étoiles et la Gloire
9.生命の樹にやどる鳥たちの喜び - Plusieurs Oiseaux des arbres de Vie
10.神の道 - Le Chemin de l'Invisible
11.キリスト、楽園の光 - Le Christ, lumière du Paradis



オリヴィエ・メシアン、関連投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50513382.html 音と色の戯れ幻視に神を想い、祈るオリヴィエ・メシアン『われ、死者の復活を待ち受ける』(1964)と『天国の色彩』(1963)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50338089.html 自然の摂理、賜物としての鳥の鳴き声、さえずり。存在が紡ぐ音楽。オリヴィエ・メシアン『鳥類譜』(1956-58)LP4枚組み。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50513382.html 音と色の戯れ幻視に神を想い、祈るオリヴィエ・メシアン『われ、死者の復活を待ち受ける』(1964)と『天国の色彩』(1963)。