yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

アンジェイ・パヌフニク『天球の交響曲 Sinfonia di Sfere (Symphony No. 5) 』( 1974-75)ほか。意匠に時代の潮流が聴こえなくても、その精神は深い。

イメージ 1

Panufnik: "Sinfonia Votiva" Mvt. 1

           

イメージ 2ポーランドの現代音楽といえば、まずクラスター音塊のソノリティの斬新と迫真、そして宗教的題材を前面に押し出した精神性の深い作品で自由主義圏西ヨーロッパに衝撃的デビューを果たしたペンデレツキ。そして世代的にはひと回り上であるけれど、新古典主義という時代潮流の堅実な作風を着実に歩みつつ、しかし激動の時代を迎え撃つ課題要請に応えるべく、偶然性、不確定性のコンセプトをも取り込み革新の書法熟成に研鑽し、現代音楽の先鋒にその名を記すまでとなったヴィトルト・ルトスワフスキ(Witold Lutosławski, 1913 - 1994)の二人がまず上げられることだろう。ところで、今日取り上げるサー・アンジェイ・パヌフニク Sir Andrzej Panufnik(1914 - 1991)は世代的にも先のルトスワフスキと時代を同じうするポーランドの代表的な作曲家といえる。じじつこの二人は大戦最中デュオでともに音楽・演奏活動をしていた間柄だったそうだ。しかしその後、パヌフニクは亡命して英国に渡る(それゆえ≪祖国ポーランドでは "存在" が消されてしまた≫)、ルトスワフスキは国にとどまり、社会主義体制の政治イデオロギー的制約の中、世界の潮流から距離をおいての音楽活動を余儀なくされる。だが、現代からする評価軸は、ルトスワフスキの先鋭性の方に重きのあることだろう。個人の資質と言ってしまえばそれまでだけれど、パヌフニクは保守的作風といえよう。だが、意匠に時代の潮流が聴こえなくても、その精神は深い。けっして弛緩はない。政治の季節を青春した当方の思い入れのせいもあるのだろうけれどポーランドとはそうでなくてはのように響くことを要請するのだ。まさしく、2曲目の『天球の交響曲 Sinfonia di Sfere (Symphony No. 5) 』(1974-75)は、その思いに応えるすばらしくパトスの充溢した緊張感満ちた深い作品になっている。これは聴きものだ。一度はぜひとも耳にしていただきたい優れた作品といえよう。

感情と知力の理想的なバランスから音楽の永遠の美が生まれる」 (アンジェイ・パヌフニク)



アンジェイ・パヌフニク

「天球の交響曲 Sinfonia di Sfere (Symphony No. 5) 」( 1974-75)
「神秘的交響曲 Sinfonia Mistica (Symphony No. 6) 」(1977)



関連、投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/56756029.html パヌフニク、ルトスワフスキ、シマンスキ、『ポーランド3大作曲家 ピアノ協奏曲集』(1999)。陰影、彫琢、精神には根が生えている。だからこそ!ポーランド!?。

http://ml.naxos.jp/album/FECD-0017 NAXOS15分無料試聴・パヌフニク:哀愁のシンフォニア交響曲第2番)/夜想曲/狂詩曲