Wolfgang Fortner's Bluthochzeit (Stuttgart 1964) Modl
ジョン・ケージのネクタイをはさみで切るというハプニングで知られた超ダダ、
アヴァンギャルドの今は亡きビデオアーチスト、
ナム・ジュン・パイク Nam June Paik
白南準 1932 - 2006)がドイツに留学、かの地で師事したのが、きょう登場するヴォルフガング・フォルトナー
Wolfgang Fortner (1907 – 1987 )。戦後の現代音楽で重きをなす多くの作曲家(
ハンス・ウェルナー・ヘンツェ Hans Werner Henze(1926 - )や
ハンス・ツェンダー Hans Zender(1936 - )、
ベルント・アロイス・ツインマーマン Bernd Alois Zimmermann(1918 - 1970)、
ヴォルフガング・リーム Wolfgang Rihm(1952 - )など)を教え生み出したドイツの指導的な作曲家だと思われるのに、日本語WIKIに記事がない。残念なことだ。
マックス・レーガー Johann Baptist Joseph Maximilian Reger(1873 - 1916)の孫弟子だそうだ。戦前の作風は
新古典主義、ネオ
バロック様式で、若くして早々と評価をかち得ていた。そして、戦前の実績のうちに培われた技法、様式にくわえ戦後は
シェーンベルクらの12音列技法を採りいれ柔軟な作風を展開した。そうした結実といえる、古典的美の堅実な中に感性の柔軟性を持って音列技法を融合した作品を収めたのがきょうの作品集といえるのだろう。「ルカによる
聖霊降臨の物語-
テノール独唱、6声の
混声合唱、11楽器とオルガンのための」(1964)。孫弟子といえオルガンなど聴くと、なるほどマックス・レーガーの影響を感じないでもない。そしてもう一曲は「トリプルム-3台のピアノとオーケストラのための」(1966)。無調音列の引き締まった余韻の中3台のピアノが打楽器的に使用されており小気味よく躍動的でありつつ緊張感を湛えた清新な音楽となっている。無調でも斯く美しいのだ、ここには凡庸は無いといっておこうか。世代的(
新古典主義時代をくぐって来た)にも年代的(戦後のセリエールを出発点とする寵児
シュトックハウゼンらよりおよそ20年の開き)にみても、これはひじょうによくできた作品だ。私のような点描的無調音列の響きの好きなリスナーにとっては好ましい音色をもっており、これらを聴くと(いま綴っていて気がついたのだけれど
メシアンの生年が1908年だから、ほとんど同じ世代だ)音楽の才、感性の柔軟、卓抜を感じ、何でこの作曲家の日本語WIKI項目が無いのかと思ってしまう。詳細な英文WIKIを見る!(全文読み切っているわけではないのだけれど)につけ、よりそう思う。
収録作品――
「ルカによる
聖霊降臨の物語 Die Pfingstgeschichte Nach Lukas-
テノール独唱、6声の
混声合唱、11楽器とオルガンのための」(1964)
「トリプルム Triplum-3台のピアノとオーケストラのための」(1966)