yuki-midorinomoriの日記

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諸井誠『ピアノ協奏曲 第1番』(1966)。音列書法の流麗で洗練された清々しさ。これって日本人の作品?と印象することだろう。

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イメージ 2最近は、現代日本の作曲家の音源をLPレコードからCDによる再発という動きが顕著であるらしく、それもロープライスにて提供されていて、現代音楽ファンとしては同慶のいたりだ。もっと多くの人にわが国の作曲家の優れた作品を親しむチャンスの与えられることをのぞみたいものだ。きょう取り上げる諸井誠(1930 - )の作品集も、ネット検索していて知ったのだけれどCD2枚組みでネット価格1500円なるものがあるのを知った。まさしくそのうちの一枚が以下のものだった。

【諸井誠/ピアノ協奏曲 第1番

1. ピアノ協奏曲 第1番  27'28"
2. ピアノのためのαとβ 作品12  12'50"
3. 以呂波譬喩八題  7'46"

演奏:1-3)小林仁(Pf) 1)若杉弘指揮、読売日本交響楽団
(1971.8発売 VX-38(KVX-5515))
録音:1)1970.3.31 杉並公会堂 2,3)不詳】

そうです、『ピアノ協奏曲 第1番』とタイトルされたレコード音盤です。A面の1. 「ピアノ協奏曲 第1番 Concerto for Piano and Orchestra no.1」など、もし名を伏せて耳にされたなら、たぶん、これが日本人による1966年作曲の現代作品なのか、などと驚かれることだろう。古典的形式のなか音列書法をつかい、それでいてというべきか、それゆえにというべきか流麗で洗練された清々しさに聞き惚れることだろう。モダニストの面目躍如といったところだろうか。B面のピアノソナタ「ピアノのための α と β 作品12 α and β for Piano Op.12」(1953)のなんという瑞々しいことか。シェーンベルクのピアノ作品ばりだ。そして、つぎのピアノ作品「以呂波譬喩八題」。これは「ピアノ協奏曲 第1番」の翌年1967に、その協奏曲作曲の余勢をかって書かれたピアノ小品で、

【 (い)― 一寸先は闇
  (ろ)― 論語読みの論語知らず
  (は)― 針の穴から天井のぞく
  (に)― 憎まれっ子よにはばかる
  (ほ)― 仏の顔も三度
  (へ)― 下手の長談義
  (と)― 年寄りの冷水
  (ち)― ちりもつもれば山となる

以上八つの“いろはかるた”たとえを一つの音列からいろいろに導き出されたテーマにより、各曲の性格がほぼ上記たとえに相当するような感じに作曲されている。たとえば、
「(ろ)― 論語読みの論語知らず」
何とも云えず味わいのある文句ですね。フーガ風に書きました。「フーガ弾きのフーガ知らず」皆さん、グレン・グールドにならってせいぜいフーガをやりましょう。
といった具合である。・・・】(レコード解説より)

モチーフが単純といえばそうだけれど、遊び心に満ちた音列展開の自由度は伸びやかなピアノ作品を結実している。上記2作品のこなれた音列展開がもたらすメカニカルでかつアーティフィッシャルな抒情と、レンジの広さがもたらすダイナミズムはなまぐささ吹っ切れてスマートでこれはこれで心地いいものだ。

蛇足ながら先のCD2枚組みの再発もののもう一枚は

【諸井誠/尺八の為の音楽  51'17"

1. 尺八と弦楽合奏、打楽器の為の協奏三章  26'05"
2. 対話五題~二本の尺八のために  13'25"
3. 竹籟五章尺八本曲  11'47"

演奏:1)酒井竹保(尺八)、藤舎呂悦(小鼓)望月太明一郎(大鼓)、山口保宣(打楽器)
 秋山和慶指揮、東京ゾリスデン
 2,3)横山勝也(尺八)、青木静夫(尺八)
(1972.1発売 VX-64)
録音:1)1971.4.29 埼玉会館 2,3)1971杉並公会堂

これらも、拙ブログにてすでに投稿済みだけれど、ぜひ聴いていただきたい戦後音楽史に残る名作です。



諸井誠、投稿済み記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/52550275.html 諸井誠『尺八と弦楽合奏、打楽器のための協奏三章』(1970)ほか。十二音技法を主是とする数理的構成主義者であり、モダニストの伝統と西洋が響きあう交感感応には自立自存、崇敬・RESPECTが響いている。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/34674923.html 魂の奥底まで響きこむ尺八のムラ息に気迫のノイズ吹きすさぶ諸井誠『竹籟五章・対話五題』ほか



http://www.makoto-moroi-music-office.com/ 諸井誠オフィシャルホームページ