yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

モートン・フェルドマン『Composing by Numbers - The Graphic Scores, 1950-67』あのフェルドマンを象徴する「静謐」はここにはない。ポストウェーベルンの音。

イメージ 1

Morton Feldman : Palais de Mari (1986) {PART 1/3}

           

イメージ 2さて、昨年末ひさびさに仕入れた3枚(2枚は中古品)のアルバムのうち残りの1枚がきょう登場するCD。モートン・フェルドマン Morton Feldman(1926 - 1987)のグラフィック・スコアー(図形楽譜)による1950年から67年までの作品演奏が収められたアルバム。もちろん、それぞれのシンボリックな図形記号の意味指示(ノーテーション)はなされているわけで、それでもそのつどの演奏が異なるのはいうまでもないことだろう。いわば、ほぼ即興演奏と変わらない。五線譜に確定的に音符を記譜することから考えれば、もうこれはある種作曲行為の放棄といえよう。こうしたことの登場する音楽思想的背景を語るにはあまりにも重たすぎる問題なのでここでは端折ることにしよう。(もっとも、そのような能力ははなから私は持ち合わせていないけれど)ひとつたしかに言えることは音楽への偶然性・不確定性の導入ということだろう。この図形楽譜なるものを音楽史上最初に提示した作曲家がきょうのモートン・フェルドマンとされているそうだけれど、それは革命的人物ジョン・ケージとの出会いを機縁とする。
≪1950年、フェルドマンはニューヨーク・フィルハーモニックの演奏会に足を運び、アントン・ヴェーベルンの「交響曲」を聴く。その演奏会場でジョン・ケージと知り合った。ケージに影響されたフェルドマンは、セリー技法や伝統和声の制約といった過去の作曲体系とは全く関係を持たない作品を書くようになる。グリッドを用いたり、一定時間に奏する音符の個数を明記したりするなど、彼が世界で最初に発案したと見られる図形楽譜を用いた実験を行った。≫(WIKI)といったようにその事態は語られている。この50年と言う年次は、二人の思想的コラボレイションによって音楽史に衝撃をもたらす偶然性・不確定性のコンセプトが投げだされた画期をなす年次であったといえるのだろう。これらを考える時、この二人と忘れてはいけないのはアール・ブラウンの存在だろう。さて、あたりまえのことながらフェルドマンは≪「結局は演奏家に好き勝手に楽譜を解釈され、自分の意図と違うものを聞かされる」事に耐えられず、70年代にはこの記譜法を放棄する。≫(同上WIKI)それがこの収録作品の最後になる67年の「In Search of An Orchestration」 (1967)というわけなのだろうか。楽譜は著作権管理が厳格なのか、なかなかネットで見ることができないようだけれど

[http://www.blockmuseum.northwestern.edu/picturesofmusic/pages/feldman.html scores: Between 1950 and 1970: Morton Feldman, In Search of an Orchestration

を、興味のある方に覗いていただけるようリンクしておこう。
グラフィック・スコアー(ノーテーション)によるパフォーマンス(リアリゼーション)自体が上記のような一回性を本義とするのであってみれば、ウンヌンカンヌンしてもあまり意味を成さないのかもしれない。が、あのフェルドマンを象徴する「静謐」はここにはないといえるだろうか。名を伏せて聴けば、ポストウェーベルンの音がしているというだけで、あえてフェルドマンのということを云う必要を感じないくらいだ。いや、というより「静謐」はこのあとにやってくる作風・事態であり、70年以前は、私が無知なだけで、こうした音作りであったのかも知れないし、いやそうではなくこのCDでのパフォーマンス(リアリゼーション)がそうなのだと・・・、そこいらはよくわからない。ということで、これまた音楽史的価値を有する音源だと括って擱くことにしよう。

至極もっともなまじめな自助努力が事態をますます悪くさせている  ジョン・ケージ


Morton Feldman『Composing by Numbers - The Graphic Scores, 1950-67』

イメージ 3Projection I (1950) (2:56)
Taco Kooistra, cello

Projection II (1951) (4:43)
The Barton Workshop, James Fulkerson, conductor

Projection III (1951) (2:01)
Philip Corner and Frank Denyer, pianos

Projection IV (1951) (4:33)
Marieke Keser, violin and Frank Denyer, piano

Projection V (1951) (2:27)
The Barton Workshop, James Fulkerson, conductor

Intersection I (1951)* (12:40)
The Barton Workshop, Jos Zwaanenburg, conductor

Marginal Intersection (1951)* (6:02)
The Barton Workshop, Jos Zwaanenburg, conductor

Intersection II (1951) (11:01)
Frank Denyer, piano

Intersection III (1953) (2:41)
Frank Denyer, piano

Intersection IV (1953) (3:10)
Taco Kooistra, cello

Out of 'Last Pieces' (1961)* (9:16)
The Barton Workshop, Jos Zwaanenburg, conductor

The Straits of Magellan (1961) (5:09)
The Barton Workshop, James Fulkerson, conductor

In Search of An Orchestration (1967)* (7:44)
The Barton Workshop, Jos Zwaanenburg, conductor