yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

『Josef Anton Riedl』(1972)。ドイツ電子音楽の魁の一人ではあるのだけれど、知名度は・・・。

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イメージ 2きょうはドイツの電子音楽作曲家Josef Anton Riedl(born in Munich in 1929-)ヨセフ・アントン・ライデルと読むんだろうかの、ドイツ・ヴェルゴ盤のLPをとりあげよう。念のためネットを覗いてもWIKIに項目が見当たらない。そういった認知の程度のようだ。
けれど、他サイトにて経歴をみると、あの土俗的でヴァイタルな精神の漲った名作カルミナ・ブラーナCarmina Buranaで有名なカール・オルフCarl Orff(1895 - 1982)と、現代音楽の初演など多くを手掛け(クセナキスを認知し強力に後ろ楯した)、前衛音楽の推進に大きく寄与し、その貢献大だったヘルマン・シェルヘン(Hermann Scherchen, 1891 - 1966)に師事して研鑽したとのこと。
そして戦後、楽音に騒音を持ち込んだりの革新をもたらしたエドガー・ヴァレーズの影響もあって音そのものへの関心からか(その影響の内実が如何なるものか詳らかにしないが)、ミュージックコンクレートを世界に先駆けピエール・アンリPierre Henry, 1927- )とともにフランスにて推進していたピエール・シェフェール(Pierre Henri Marie Schaeffer, 1910 – 1995)のもとに馳せ参じ1953から55年の間フランス国営放送局内の「具体音楽研究集団 Groupe de Recherche de Musique Concrète 」にて研鑽をつみ、帰国後、師のカール・オルフが創設に携わったジーメンス電子音楽スタジオや、その他各地の電子音楽スタジオに勤め、その種の創生期の作品の初演、リアリゼーションを企画催し推進するに到る、とのこと。
またいっぽう長年にわたって、子供、障害者、市井の人々の音楽活動のイヴェント等々へも参画携わっており、現在は音と映像のマルチメディア芸術領野への活動に軸足を置いているそうだ。
このように、その道では知れ渡る主導的作曲家と言えるのだろうか。自作品も、先の音楽監督を務めるスタジオにて多く制作しているわけで、その一端がこのアルバムに収録されているということなのだろう。このJosef Anton Riedlの音の電子的造形処理は、原形をとどめないような極端な変形、バリエーションをもつものではなく、まさに具体音の電子的変形のつながりといった印象だ。
いっしゅの音響効果音の制作、その陳列オンパレードといった感がないでもない。それでも、その提示される響きにはやはり、初めて現出する<音>との出会いの面白さ、刺激に満ち、惹きこまれる。
「PAPER MUSIC」 (1968/70)というその名の通り、紙というありふれた素材が発する様々な具体音の磁気テープ処理のバリエーションで制作された作品や、「VIELLEICHT-DUO」 (1963/70)の、容器の水を飲み乾したり、うがいしたり、吹き込んだりといった、人と液体との触れ合い、戯れで生じる音を素材にしたこれまたその具体音の磁気テープ処理のバリエーションは、ユーモラスかつ刺激的ではある。
ただ言えることは、同様なミュージックコンクレートはといえモーリスベジャールのモダンダンスと強く結びついたピエール・アンリのミュージック・コンクレートとは、音楽性という面において違いが感じら、イメージ 3れるのも確かだ。
音の向こうからやってくるものへのまなざし、それへの聞き耳をたてるといったような音への認識姿勢が物足りないといえば言えるのかも・・・。電子音楽創生期の作曲家との共同作業、たとえばシュトックハウゼンとのヘルベルト・アイメルトや、より濃密な共同関係にあったゴットフリート・ミヒャエル・ケーニッヒなどが知られるところとなっているのは、ここいらあたりに求められるのだろうか。たんなる電子音ではなく電子<音楽>への志向性のありやなしや、その度合いの軽重といった違いなのだろうか。

写真→ジーメンススタジオの、カール・オルフとアントン・ライデル


『Josef Anton Riedl』(1972)


Tracklisting:

• polygonum (1968)
• nr. 3 (1966-67)
• paper music (1968/70)
• nr. 4/1 (1968-69)
• studien für elektronische klange ii - i - iv (1959-62)
• vielleicht-duo (1963/70)