yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

舘野泉『THE BEST』(2008)。左手だけでのピアノ演奏に「音楽の命」、生命の証を注ぎ込んだ決然の魂のピアノの響き。

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舘野泉~左手のピアニスト

           
かすかな冬の朝の光が向かいの家に落ちている。壁にしみがついているような弱々しい光をいつまでも見ていた。その向こうに何かあるような気がする。夢だろうか期待だろうか。(舘野泉「ひまわりの海」・リハビリ中の自宅で)
イメージ 2はや2年ほど前になるけれど≪安らぎと静穏に迎え入れるにふさわしい愛すべきピアノ小品集。館野泉のグリーグ『抒情小曲集』≫とタイトルして投稿したアルバムのピアニスト舘野 泉(たての いずみ、1936 - )。北欧フィンランドに魅入られ、かの地を終生の音楽活動の場として居を定めていた、その彼が≪2002年1月9日、フィンランドタンペレでのリサイタル中に脳溢血で倒れ、その後遺症として右半身に麻痺が残る。≫(WIKI)と云う演奏家にとって致命的な痛恨事態を精神的に克服し、左手だけでのピアノ演奏に「音楽の命」を注ぎ込んだ決然の魂のピアノの響きの収められた『THE BEST』が、きょう取り上げるアルバム。これはわが町の図書館より借り受けたもので、税収不足の折、新らしく所蔵された数少ないアルバムのうちの1枚。左手だけと云う制限された必要最小限の音で奏でられた命の響き。まさにココロをうつ音楽とは斯くなるシンプリシティにこそあるのでは・・・と言いたくなる。音楽することの初源、その純一なる響きといえるのかも・・・そはココロにひびきわたる。それにしても収められた吉松隆作曲の≪タピオラ幻景≫など、左手だけで演奏されているとは、ほとんど信じ難いほどのその豊麗豊穣なピアノの響きは驚き以外ではない。



舘野泉『THE BEST』(2008)

1. 左手のための2つの小品 前奏曲スクリャービン
2. 左手のための2つの小品 夜想曲スクリャービン
3. シャコンヌ (バッハ/ブラームス編曲)
4. ≪タピオラ幻景≫(吉松隆)より I.光のヴィネット
5. ≪タピオラ幻景≫(吉松隆)より II.水のパヴァーヌ
6. ≪タピオラ幻景≫(吉松隆)より III.風のトッカータ
7. アヴェ・マリア (カッチーニ吉松隆編曲)
8. アヴェ・マリア (シューベルト吉松隆編曲)
9. 2つのヴァイオリン、チェロ、左手ピアノのための組曲コルンゴルト)より 第1楽章 プレリュードとフーガ
10. 左手のためのソナチネ(ディヌ・リパッティ)より 第2楽章 アンダンテ・エスプレッシーヴォ


Izumi Tateno Scriabin Nocturne for left hand


http://www.izumi-tateno.com/ 舘野泉オフィシャルサイト