yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

オリヴィエ・メシアン『7つの俳諧』ほか。とりわけエロワとプスールの2作品は、かっちりしたセリー・アンテグラルのもと洗練と陰影に富む響きの世界は法楽であり愉悦ですらある。もはやこれらは古典的美である。

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Jean Claude Eloy Equivalences 1963 Pierre Boulez, The Domaine Music Ensemble

           

オリヴィエ・メシアン (右) アンリ・プスール
イメージ 2 イメージ 31962年に日本を訪れたときの印象をもとに作曲されたオリヴィエ・メシアンの「7つの俳諧」が、たぶんこのアルバムのメインなのだろう。他の収録2作品はフランスのジャン=クロード・エロワJean-Claude Éloy (1938-)と、ベルギーのアンリ・プスールHenri Pousseur (1929 - 2009)。この3作品をピエール・ブーレーズが揮っている。師のオリヴィエ・メシアン、一回り下の世代で作曲をブーレーズに師事したジャン=クロード・エロワ(1938-)。あまり年の開きはないゆえ、作曲を師事したというよりは前衛の最前線をともども歩んだ同志といえるアンリ・プスール。と言うことで指揮のブーレーズと関係を有する三人の作品集が、今日取り上げるアルバム。「7」と言う数字のもつ意味や如何と言う、いかにもエッセイシストの好みそうな薀蓄のことどもは、またの機会にするとして・・・、ともかくオリヴィエ・メシアンは他の2作品と聴き比べるまでもなく異質の世界だ。鳥の鳴き声が音楽構造の根幹の一つに据えられていることひとつをとってみても奇異ではある。しかしながら作品としての面白さは、後の二者のほうがはるかに聴き応えがある。かっちりしたセリー・アンテグラルの上に音色展開される彩は、煌びやかで斬新であり、洗練と陰影に富む響きの世界は法楽であり愉悦ですらある。もはやこれらは古典的美であると自らを主張しだしている。
【彼(オリヴィエ・メシアン)の音楽の「例外的な強靱さはリズム、つまり時間概念にあった」。こんにちの音楽における「リズム概念の革新の重要さを私たちに理解させたのがメシアンであり、その根源に《春の祭典》があった」とブーレーズが言う。・・・・・「彼は鳥の鳴き声、岩山、風景、色彩、山々といった自然からインスピレーションを受けたのではない」とブーレーズは続ける、「そうではなく、彼はそれらが語るものをそのまま音楽に移し換えたのだった(…)メシアンにとって音楽とは、そうした宇宙的な現象の一環であり(…)、作曲とは、そもそも<コンポジット>(組み合わせ)という言葉を内包する作業だった。メシアンは自身の複雑な音楽思想の彼方に子供のような新鮮さとあらゆることに感動できる感性を持ち続けることに成功した。」≫(ピエール・ブーレーズ
収録曲――
オリヴィエ・メシアンOLIVIER MESSIAEN「7つの俳諧SEVEN HAIKAI」(1962)
ジャン=クロード・エロワJEAN-CLAUDE ELOY「エキヴァランスEQUIVALENCES」(1963)
アンリ・プスールHENRI POUSSEUR「マドリガル第3番MADRIGAL Ⅲ」(1962)


関連投稿記事――               右写真:ジャン=クロード・エロワ

イメージ 4http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/44616582.html ジャン=クロード・エロワ(1938-)の混沌の電子騒・雑音ドローンの感動『SHANTI』(1972-73)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/42630996.html 未分明了解定かならないアマルガムな音塊ドローンの流動。騒雑音の不思議な感動。ジャン=クロード・エロワ(1938-)の『GAKU-NO-MICHI(楽の道)』(1977-78)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/52397958.html アンリ・プスール『Les Ephemerides d’Icare 2』(1970)。音の交感、照応のインプロヴィゼーション。確かめ合うごとくゆるやかに進行してゆく、響きあう世界。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/45200658.html 羨ましいほどの落ち着き、ゆとり。洗練。流れるような前衛。アンリ・プスール(1929‐)の『貴方のファウストの鏡の戯れ』(1967)

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/31168179.html ブルーノ・マデルナによる名演アルバムでシュトックハウゼン 『KONTRA-PUNKTE』 を聴く

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/27606588.html 入門を手招きするブーレーズ、ノーノ、シュトックハウゼンの『現代音楽の創造者たち』

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/58131364.html オリヴィエ・メシアンの自作自演『オルガン名曲集』(1969)7枚組み。わが除夜の鐘より、ひとまず先に神と共なる祈りの教会オルガンで心鎮めよう。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/57768276.html オリヴィエ・メシアン彼方の閃光 Eclairs sur l'Au-dela』(1987‐91)。音として聴くことなく逝った絶筆「白鳥の歌」。信仰篤きまなざしの真摯を思わないではいられない固有の世界。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50513382.html 音と色の戯れ幻視に神を想い、祈るオリヴィエ・メシアン『われ、死者の復活を待ち受ける』(1964)と『天国の色彩』(1963)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50338089.html 自然の摂理、賜物としての鳥の鳴き声、さえずり。存在が紡ぐ音楽。オリヴィエ・メシアン『鳥類譜』(1956-58)LP4枚組み。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50513382.html 音と色の戯れ幻視に神を想い、祈るオリヴィエ・メシアン『われ、死者の復活を待ち受ける』(1964)と『天国の色彩』(1963)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/45511396.html オリヴィエ・メシアン『(8つの)前奏曲集』(1928-29)と『音価と強度のモード』(1949‐50)を聴く。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/39200551.htmlオリヴィエ・メシアンイヴォンヌ・ロリオのピアノデュオによるコラボレーションの巧緻『アーメンの幻影』(1971)≫

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/37870513.html ≪ミシェル・ベロフによるオリヴィエ・メシアンの『幼子イエズスにそそぐ20のまなざし』(1944)メシアンドビュッシーを聴く≫

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/35667432.html ≪神のいない高橋悠治とピーター・ゼルキンのデュオ『アーメンの幻視・Vision de L’amen』≫



Henri Pousseur, Madrigal III (Boulez, Domaine Ensemble) - Part 1