yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

『SPECTRUM : NEW AMERICAN MUSIC, VOLUME II』。ナチスドイツによる民族的思想的厄災が皮肉にもアメリカの音楽状況をセリエリスムという時代の先端潮流へと投げ入れた。

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George Rochberg: "Serenata d'estate"(1955)

           

先日に引きつづきアメリカの現代音楽作曲家紹介シリーズともいえる『SPECTRUM : NEW AMERICAN MUSIC, VOLUME II』を取り上げよう。このアルバムには3人の作曲家の作品が収められている。目玉はいうまでもなくシュテファン・ヴォルペ(Stefan Wolpe、1902 - 1972)だろう。ナチスドイツの戦禍を逃れてアメリカへ渡ってきた大物作曲家のひとりといえようか。アメリカの作曲界を押し上げたのは彼らの存在に与ること大きかったと云えるのではないだろうか。シェーンベルクバルトークしかり。そしてこのヴォルペ、エルンスト・クルシェネックハンス・アイスラークルト・ヴァイル、それに拙ブログですでに数回投稿しているルーカス・フォス(この夫人とグレン・グールドは一時期恋仲であったことは有名)。私の貧弱な記憶力からしてもこのような作曲家が思い出される。かれらのナチスドイツによる民族的思想的厄災が皮肉にもアメリカの音楽状況をセリエリスムという時代の先端潮流へと投げ入れたといえるだろうか。収録されている3人のうちのひとりジョージ・ロックバーグまたはロッチバーグ(George Rochberg、1918 - 2005)など≪1963年に息子の死を機に音列技法を棄て、セリエルは情緒豊かな表現力に欠けており、悲しみや憤りを表現するに似つかわしくない、と述べた。1970年代までは、しばしばあからさまな調性音楽によって、議論を呼び起こした。≫(WIKI)とあるような作風の変遷をもつにせよ、このアルバムに収めれれている
「Serenata d'estate」(1955)などはその作曲年代からして完璧なセリエリスムによる作品だ。残念ながら目玉として収められているシュテファン・ヴォルペによる「Chamber Piece No. 1 」(1964)と比べるとその力量の差はハッキリしていると(私は思う)はいえ、決してつまらない作品ではない。センシティヴだ。
最後にもう一人のSEYMOUR SHIFRIN(1926-1979)は時間足らずの情報不足でまたの機縁としたく思います。




『SPECTRUM : NEW AMERICAN MUSIC, VOLUME II』

Stefan Wolpe :「Chamber Piece No. 1 」(1964)
George Rochberg :「Serenata d'estate」(1955)
Seymour Shifrin :「Satires of Circumstance」(1964)



http://www.jiwa.fm/#album/13666 このアルバム収録のシュテファン・ヴォルペ作品「Chamber Piece No. 1 」(1964)がフリーで全曲聴けます

http://artofthestates.org/cgi-bin/composer.pl?comp=86 Art of the States: Stefan Wolpe シュテファン・ヴォルペ作品公開音源サイト



シュテファン・ヴォルペ、エルンスト・クルシェネク関連投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/57037181.htmlシュテファン・ヴォルペ「Trio (for flute,piano,cello)」(1963)ほか。無調音列主義の軽快な作品。ひじょうにシンプルで心地よい。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/57059278.htmlエルンスト・クルシェネク「Aulokithara for oboe, harp & tape」(1972)ほか。音楽をシンプルに愉しんでますといったところだろうか。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/50764999.html(1) 『THE AVANT GARDE STRING QUARTET in the USA』。聴きものです。再発、廉価NAXOS盤にあり。


http://artofthestates.org/cgi-bin/composer.pl?comp=87 Art of the States: Ernst Krenekエルンスト・クルシェネク作品公開音源サイト