yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

武満徹『トゥイル・バイ・トワイライト~武満徹作品集』。調性の抒情には、たんなる甘美な旋律を越え、ときに力強く宇宙的時空の広大重厚ささえ響き渡らせる。

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Tōru Takemitsu: Les yeux clos II (1988) by Odilon Redon

           
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≪私がうたいたい旋律(うた)は、単純な叙情の線ではない。それをも含めた、多くの糸が複雑に撚り合わされた、物語る線である。だが、私は、まだそれを手にしてはいない。≫(「時間の園丁」より)
いささか食傷気味といったら言い過ぎだろうか。武満徹の「調性の海」への航跡に残された、どれも似たような音響世界のイメージにはそうした悩ましさがつきまとう。そうではないだろうか。もちろん批判的言評のあることも承知してはいる。和製ドビュッシー。とはいえヴァーチカルな音の造形性、その余韻の深さには感じ入る、そはやはり武満だ。ほとんどが自然と向き合い対峙して紡ぎだされた武満ワールドだ。だからといって俗塵にまみれ汚れた現実世界を忌避しているわけではない。

私は音楽と自然のかかわりについて、いつも考えているが、それは自然の風景を描写するということではない。私は時として人間のいない自然風景に深くうたれるし、それが音楽する契機ともなる。しかし、みみっちくうす汚れた人間の生活というものを忘れることはできない。私は自然と人間を相対するものとしては考えられない。私はいきることに自然な自然さというもをとうとびたい。それを<自然>とよびたい。これは奥の細道に遁れるような行為とは大きく矛盾するのである。私が創るうえで、自然な行為というのは現実との交渉ということでしかない。芸術は現実との沸騰的な交渉ののちにうまれるものだ。
                    (武満徹『音、沈黙と測りあえるほどに』より)

だからこそその調性の抒情には、たんなる甘美な旋律を越え、ときに力強く宇宙的時空の広大重厚ささえ響き渡らせる。透徹の認識に音は屹立し、斯く音を在らしめる。武満の武満トーンたるゆえんと言っておこうか。
きょうも図書館ネット借受のCD鑑賞。



武満徹『トゥイル・バイ・トワイライトTwill by Twilight~武満徹作品集』

1. デイ・シグナル―シグナルズ・フロム・ヘヴン1― Day Signal (1987)
2. 夢の引用―セイ・シア,テーク・ミー!― Quotation of Dream (1991)
3. ハウ・スロー・ザ・ウィンド How Slow the Wind (1991)
4. トゥイル・バイ・トワイライト―モートン・フェルドマンの追憶に― Twill by Twilight (1988)
5. 群島 S. Archipelago S (1993)
6. 夢窓 Dream/Window(1985)
7. ナイト・シグナル―シグナルズ・フロム・ヘヴン2― Night Signal (1987)