『日本の神楽(かぐら) Shinto Music and Dance of Japan』。なんと始原的でかつ荘重なことか。エキゾティックでさえある。
『神楽歌』
榊(さかき)
(本歌)
榊葉(さかきば)の 香(か)をかぐはしみ 求(と)め来(く)れば 八十氏人(やそうじびと)ぞ 円居(まとゐ)せりける 円居(まとゐ)せりける
(末歌)
神籬(かみがき)の 御室(みむろ)の山の 榊葉(さかきば)は 神の御前(みまえ)に
茂りあひにけり 茂りあひにけり
榊(さかき)
(本歌)
榊葉(さかきば)の 香(か)をかぐはしみ 求(と)め来(く)れば 八十氏人(やそうじびと)ぞ 円居(まとゐ)せりける 円居(まとゐ)せりける
(末歌)
神籬(かみがき)の 御室(みむろ)の山の 榊葉(さかきば)は 神の御前(みまえ)に
茂りあひにけり 茂りあひにけり
きのうは、たまたまラジオから流れていた現代音楽作曲家・ 肥後一郎 による現代邦楽作品「神楽舞」を聴いて、それをきっかけにしての投稿だった。で、今日もべつだん意図してのことではなく、たまたま図書館のネット借受で手にしたのが『日本の神楽(かぐら)』であったというタイミングに過ぎないのだけれど。WIKIによれば
【「かぐら」の語源は、「神座」(かむくら・かみくら)が転じたものとする説が一般的である。神座とは「神の宿るところ」を意味し、神座に神々を降ろし、巫女が集まった人々の汚れを祓ったり、神懸かりとなって神の意志を伝えたり、また人の側からは願望が伝えられるなど、神人一体の宴を催す場であり、そこでの歌舞が神楽と呼ばれるようになったと考えられている。古事記および日本書紀においては、岩戸隠れの段でアメノウズメが神懸りして舞ったという神話が神楽の起源であるとされる。アメノウズメの子孫とされる猿女君は宮中において鎮魂の儀に携わっており、このことから神楽の元々の形は鎮魂・魂振に伴う神遊びであったとも考えられる。神楽は、宮中で行われる御神楽(みかぐら)と、民間で行われる里神楽(さとかぐら)に分けられる。】
音が無ければ、神の姿は見えない。音ともに気配としてやってくるのが神というわけだ。まさに音連れ=訪れということだ。神とともに遊ぶには音がいる。その神とともにある歌舞音曲を神楽(かぐら)といい、宮中でのそれを御神楽(みかぐら)といい、民間で行われるそれらを里神楽(さとかぐら)という。
アルバムを聴いて思うのは≪宮中で行われる御神楽(みかぐら)≫のなんと始原的でかつ荘重なことか。エキゾティックでさえある。それにシンプルな楽の音と朗誦がもつ、神とともにあった歴史精神の古層への迫真的な喚起力は魅力とともに考えさせられる。疑う余地無くたぶんこうであっただろうと思わせるほどのものだ。それに比して≪民間で行われる・・・里神楽(さとかぐら)≫を耳にすると(もちろん、すべてがそうだというわけではないのだが)、お囃子の調子など、そのエモーショナルな音の乱舞がなにか整除された感じ(いわゆる芸能化?)でモダンに響くのだ。≪宮中で行われる御神楽(みかぐら)≫ほどには、現代と異質な歴史を感じさせるどころか、比較的あたらしく、近世以降なのでは?の印象が私にはするのだけれど。ほとんどの民謡が近代国家形成とパラレルに、つまりは幕末明治以降に作られて(洗練整除、芸能化されて)いるのと同様な印象がしないでもないのだけれど・・・。じじつ≪明治以降に国風歌舞や謡物の手法で多くの神楽が製作された。≫(WIKI)のだそうだ。といった私の思い込みもあってか、心とらわれるのは、なんといっても神的なものへの係わりの人間の初源を聴く思いのする≪宮中で行われる御神楽(みかぐら)≫だと言って、この稿擱こう。拍子木のように打ち合わせて音を出す≪笏拍子(しゃくひょうし)≫の、ただ木を打ち合わせて音を出すだけという超シンプルさなのに、なんと神韻玄妙な響きだこと。
『日本の神楽 Shinto Music and Dance of Japan』
1. 阿知女作法
2. 三度拍子
3. 間籍の音取
4. 榊 本歌~末歌
5. お介
6. 隠岐神楽~注連行事(島根)
7. 有田神楽(広島)
8. 岳の山伏神楽~三番叟(岩手)〈ひやま番楽(山形)〉
9. かけ謡
10. 番楽
11. 伊勢太神楽(三重)
2. 三度拍子
3. 間籍の音取
4. 榊 本歌~末歌
5. お介
6. 隠岐神楽~注連行事(島根)
7. 有田神楽(広島)
8. 岳の山伏神楽~三番叟(岩手)〈ひやま番楽(山形)〉
9. かけ謡
10. 番楽
11. 伊勢太神楽(三重)
参考リンク――
http://www2s.biglobe.ne.jp/~t-sato/index25.html 神楽歌
http://tukineko.pekori.jp/heian/yougo2/kayou/kayou.html 神楽歌等、平安時代の歌謡
http://tukineko.pekori.jp/heian/yougo2/kayou/kayou.html 神楽歌等、平安時代の歌謡
日本の伝統音楽、関連投稿記事――
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/58484487.html 『声明と雅楽の世界』。「越天楽」だけで雅楽を済ましてしまうには余りにも勿体ない。歴史が鳴っています。自然が息づき吹き遊(スサ)んでいますといったところだろうか。
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/58473397.html 雅楽、伶楽舎・ 芝 祐靖『陰陽師』。素晴らしい!。自然が起ちあがってくる息吹、息づかい気韻荘重を深く感じさせて秀逸だ。自然が吹き遊(すさ)んでいる。
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/39880032.html 1400年の歴史の積層がヘテロホニックに起ちのぼる音の宇宙へと誘う東儀秀樹の『雅楽(天・地・空~千年の悠雅)』(2000)
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/57109995.html 『日本の民族音楽・日本のハーモニー』。神への祈り、神への訴ったえ(ウッタエ)。リズム、フシ(節)をつけて歌うのだった。ともかく、人は歌ってきた、歌いつづけてきた。
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/56198220.html 『日本の囃子~能楽囃子』。能とは、能音楽とはこの声、掛け声ではないのか。イヨー、イヤー、オー、ハッ、ホッ・・・。