佐藤聰明『仄かなる闇~佐藤聰明作品集』(1998)。とことん静謐に耳そばだてる音楽。ここまで徹底するとたしかに、その静謐とはエネルギーに満ちた事態であることを知る。
Anne Akiko Meyers performs Somei Satoh's Birds In Warped Time. Watercolours by William M. Townsend.
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とことん静謐に耳そばだてる音楽。ここまで徹底するとたしかに、その静謐とはエネルギーに満ちた事態であることを知る。超高速回転する独楽が静止している如くあるように。無とは何も無い事態ではない。分節不可の全一として満ちた世界ともいえよう。いわば原事態。有即無、一即多。沈黙とは音のない世界ではない。沈黙は語る。何事かを告げる。気の充溢とは、また斯くなる事態でもあるのだろう。静謐に身を置くとは、決してたんにリラクゼーションの謂いではない。五官を研ぎ澄ますことであり、その場に佇むことでもある。それはまた、祈りであり礼であると言えるのだろう。
なにやら、ヘンリク・グレツキに通底する哀しみの荘厳の響きがしないでもない。
なにやら、ヘンリク・グレツキに通底する哀しみの荘厳の響きがしないでもない。
【黙しつつ告知しようとする者は、<なにか言うこと>がなくてはならない。現存在は呼びかけにおいて、ひとごとでない自己の存在可能をおのれに告知するのである。この呼びかけが黙示であるのは、このためである。良心の話は、決して発声されることがない。良心はひたすら黙しつつ呼ぶ。すなわち、その呼び声は、無気味さの音なき境から聞こえてきて、呼び起こされた現存在を、粛然たるべきものとして、おのれ自身の静かさのなかへ呼びかえすのである。したがって、良心を持とうとする意志は、この黙示的な話を、ひとえに沈黙のなかでのみ、適切に了解するのである。この黙示は、世間の常識的な世間話に口出しを許さない。】(マルチン・ハイデガー「存在と時間」(下)理想社第二編第二章第六十節・良心において臨証される本来的存在可能の実存論的構造より。以上ゴシック強調は引用者)
佐藤聰明『仄かなる闇~佐藤聰明作品集』(1998)
GLIMMERING DARKNESS - WORKS BY SOMEI SATOH
01.黄昏の香を聴く~弦楽合奏
LISTENING TO FRAGRANCES OF THE DUSK FOR STRINGS
02.神の身売り~ソプラノとチューブラ・ベル,弦楽合奏
GOD SELLS OWN BODY FOR SOPRANO, TUBLER BELLS AND STRINGS
03.仄かなる闇~クラリネットと弦楽合奏
GLIMMERING DARKNESS FOR CLARINET AND STRINGS
04.螢火の庭~弦楽合奏
FIREFLY GARDEN FOR STRINGS
LISTENING TO FRAGRANCES OF THE DUSK FOR STRINGS
GOD SELLS OWN BODY FOR SOPRANO, TUBLER BELLS AND STRINGS
GLIMMERING DARKNESS FOR CLARINET AND STRINGS
FIREFLY GARDEN FOR STRINGS
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