yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

湯浅譲二『トリプリシティ・フォー・コントラバス・湯浅譲二作品集』(1974)。単なるモダンで終わっていないところが、この作曲家の優れたところといえるのだろう。

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Yuasa- Cosmic Haptic:Aki Takahashi performs

          
          投稿音源のものではありません。
僕はやっぱり自分が音楽を聴いて、どこか今まで見たことのない世界に連れていってくれるような音楽を書きたいと思います。でも、それは自己陶酔とは全然違うと思う。
さてきょうは、若く、無名であった武満徹(1930 - 1996)の実験工房時代(1951-57)を語るとき、かならずその名があげられる同志?湯浅譲二(ゆあさ じょうじ、1929 - )のアルバム『トリプリシティ・フォー・コントラバス湯浅譲二作品集』(1974)をとりあげよう。今からちょうど四年前、拙ブログ開設間もない頃に≪ホワイトノイズに光速で消え行く<わたし>≫とタイトルして投稿し、≪叙情性をもちつつ現代音楽の作曲手法を独創的な感性に展開した武満徹。これに対して湯浅譲二は理知が前面に出てくる印象が強い。≫、つまりは≪実験精神に優れた人≫と述べた。そのことは≪「私にとって音楽とは、イメージ 2音響エネルギー体の空間的・時間的推移である」。≫(WIKI)とのこの言葉で、ある程度のイメージ的な了解を得られることだろう。数理的なグラフ解析の思考をベースとした作曲手法のその特異性は、モダニスムの匂い芬々にもかかわらず、作り出され響いてくる音は余韻余情をすら感じさせる。≪個々の人間が持つ個人性、その人の歩んできた歴史背景、学習・経験してきた事柄、さらに地域性、民族性、時代性などを包括する≫という作曲家の≪「コスモロジー」≫(WIKI)の反映結晶を音楽だとする理念ゆえか、わが国の伝統的な邦楽がもつ「息」という数えられない拍節(伸びたり縮んだり、不分明に揺らいだりする)が、西洋的な数えることを基本とする明確な拍節とは根本的な違いをもつとの認識から、独特の時空構造をもつ音楽【日本の場合はまさに息の持続で時間を勘案するという音楽、数えない時間というありよう、数えられない時間の持続というのが、まるで洋楽の伝統とは違う基盤の上に立っているということも考えに入れて僕は作曲するんです。】(春秋社・「未聴の宇宙、作曲の冒険」)を志向している。このような単なるモダンで終わっていないところが、この作曲家の優れたところといえるのだろう。
たとえば、収録曲「a-2. プロジェクション・エセンプラスティック―ホワイト・ノイズによるProjection Esemplastic for White Noise」という電子音楽で使用しているホワイト・ノイズ(あらゆる周波数の音を含んだ、いわばザーといったノイズ音)を素材にしテーマとしたのも【それは、非常にある意味では日本的だということを自覚してやっていたんですけどね。つまり、一即多、多即一というようなことが禅や仏教で言われているわけで、ホワイト・ノイズを使ったのはそこにも深い関係があるんです】(同上)というように・・・。単なる数的処理で終わっていない。
また「b-1. ヴォイセス・カミング(電話の交換局、フィラー言語、政治演説から作られた会話の音声に基づくテープ音楽)」なども、コトバと音楽の問題というより以上に、人間存在にとって、ムダ、冗長、いわゆるリダンダンシーなるものが如何に重要かを考えさせられるおもしろい作品だ。人がやり取りする会話の中で発する意味のない接続詞、間投詞など、「・・・その、・・・あの、・・・それは、・・・つまり、・・・う~ん、・・・」といった部分のみを抽出して切り貼りし作られているテープ音楽なのだけれど、その意味のないことばの何とヒューマンな響きなことか。人間社会には如何にムダ(な存在)が必要か・・・。不確かさ、不明瞭さ、曖昧さ、ファジー?。


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          画像:電子音楽「イコン」グラフィックスコアー一部→

湯浅譲二『トリプリシティ・フォー・コントラバス湯浅譲二作品集』(1974)

a-1. トリプリシティ・フォー・コントラバス Triplicity for Contrabass
a-2. プロジェクション・エセンプラスティック―ホワイト・ノイズによる Projection Esemplastic for White Noise

b-1. ヴォイセス・カミング(電話の交換局、フィラー言語、政治演説から作られた会話の音声に基づくテープ音楽)
Voices Coming
1-1テレフォノパシー
1-2インタヴュー
1-3A Memorial for two men of peace,Murdered



湯浅譲二関連、投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/60552776.html 藤家渓子、湯浅譲二、田中カレン、猿谷紀郎『21世紀へのメッセージ2』(1995)。その音響体に、セリーが培った美意識、骨格のありやなしや・・・。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/56822061.html湯浅譲二作品集』。抽象度の高く深い精神性と<和のこころ>その余情。原初、深奥へ迫り分け入る精神性、厳しさは超弩級

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/56624825.html湯浅譲二個展』(1979)。時代の流れへの、軽い悪乗りだったのだろうか。いやそうではあるまい。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/17884344.html ホワイトノイズに光速で消え行く<わたし>