yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

Philipp Wachsmann『Chamberpot』(Bead 2・1976)。ボーダレス・フリーパフォーマンス。はぐらかした浮遊感。拡散と集中のビミョウな往還の特異に却って不思議な魅力。

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   「小 半 と き 河 馬 の 見 て ゐ る 春 の 水」 三好達治

   「桜 散 る あ な た も 河 馬 に な り な さ い」 坪内稔典

   「春 風 や 聖 者 に 似 た る 河 馬 の 顔」 後藤比奈夫

Philipp Wachsmann, Peter Urpeth, John Russell (part 1)

           
           投稿音源のものではありません。

デカデカと大あくびしているカバのレコードジャケットで目を引くは、ふた月ほど前に≪Philipp Wachsmannトリオ『SPARKS OF THE DESIRE MAGNETO』(1977)。結構面白いパフォーマンスをしているのに、手にした当時それほど強い印象を持たなかったのだろうか≫と寸評タイトルして投稿したアルバムの前年1976年に収録されたPhilipp Wachsmannの『Chamberpot』。こちらはドラムレスのクァルテット編成のいわば即興室内楽。おとつい≪ハワード・ライリー『SYNOPSIS』(Incus 13・1973)。フリージャズというより、現代音楽畑の即興演奏にちかい。いずれにせよフリージャズ史に刻み込まれる名盤といえよう。≫と印象したと同様、このグループもおなじくボーダーレスと呼ぶにふさわしいパフォーマンスでおもしろい。一枚目の先の投稿で

【このレーベルの設立運営者と思しきPhil Wachsmann (1944-)は、関心を抱いていた音楽家にアントン・ウェーベルンWebern, ハリー・パーチPartch, チャールズ・アイヴズIves, ルチャーノ・ベリオBerio ,Varèse の名をあげており、またジョン・ケージCage, コーネリアス・カーデューCardew, モートン・フェルドマンFeldman, ロバート・アシュレイAshley たちの作品演奏をおこなっていたそうだ。そのようなことから察するに現代音楽への志向性が根っこにはありそうだ。きょうの取り上げるアルバム『SPARKS OF THE DESIRE MAGNETO』(1977)のパフォーマンスも明らかにそうした趣をもつ即興演奏だ。また、デュシャン大ガラス作品「The bride stripped bare by her batchelors, even. (彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも)」の作品ノートから曲タイトルが付けられているとあるのも、なにやら気がそそられるところがある。】

と記した。総じての印象は、はぐらかした浮遊感。意識的なメリハリの無さ、拡散と集中のビミョウな往還の特異に却って不思議な魅力を感じさせる。この手の内向的なコレクティヴパフォーマンスは独仏ではあまりないように思うのだが・・・。≪<冷厳の美>『BALANCE』(1973)。ここにもイギリスの「冷え寂び」あり・・・。アントン・ウェーベルンのフリージャズ・ヴァージョン。≫と以前投稿したけれど、斯くイギリスならではと言い募りたいところなのだけれど、さて・・・。




Richard Beswick, Simon Mayo, Philipp Wachsmann, Tony Wren - 『Chamberpot』(Bead 2・1976)

Tracklist:
A. Sleek And Healthy, A Hippo Strolls Along The River Bank 20:08
B1. Huge 4:18
B2. New 5:29
B3. Scare 4:32
B4. Hits 9:38
B5. City 1:53

Credits:
Clarinet - Simon Mayo
Double Bass - Tony Wren
Oboe, Cor Anglais - Richard Beswick
Recorded By - Matthew Hutchinson
Violin - Philipp Wachsmann

Notes:
Recorded 6/7 February 1976, West Square Electronic Music Studio, London SE1