yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ビトゥイーンBetween『Hesse Between Music』(1977)。瞑想的ドローンの調べにのってのヘルマン・ヘッセの詩とことば。

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      Cover painting:Caspar David Friedrich / titled "Der Mönch am Meer" (1808/1810).

HERMANN HESSE: Chinesische Legende (Gert Westphal)

           

昨日≪ピーター・ミヒャエル・ハーメル 『Other voices,Other rooms』(cal・1974)。≫を投稿した勢いで、今まで棚に埃の被るままにまかせていた、この作曲家主宰する多国籍な演奏家グループ<Between>のアルバム『Hesse Between Music』(1977)を今日は投稿しよう。ヘルマン・ヘッセ(Hermann Hesse, 1877 - 1962)だから当然ドイツ語。おまけに直輸入盤だから日本語訳もなにもなし。たぶんミヒャエル・ハーメル Peter Michael Hamel (born in Munich, 15 July 1947)のインド音楽からの影響を受けたミニマル・ミュージックを聴きたいということのみで手にしたのだろう。詩の意味、訳など分からぬまま(添付詩文なども一切なし)に付随音楽として聴いたのみだった。で、黄ばんでホコリまみれの新潮文庫高橋健二訳の「ヘッセ詩集」を引っ張り出してきて、アルバム収録のヘッセの詩を探してみた。なかなか無いもので・・・。

    幸福を追いかけている間は、
    お前は幸福であり得るだけに成熟していない、
    たとえ最愛のものがすべてお前のものになったとしても

    去ったものを惜しんで嘆き、
    色々の目あてを持ち、あくせくとしている間は、
    お前はまだ平和が何であるかを知らない

    すべての願いを諦め、
    目当ても欲望ももはや知らず、
    幸福、幸福と言い立てなくなった時、

    その時はじめて、でき事の流れがもはや
    お前の心に迫らなくなり、お前の魂は落ちつく。

             ヘルマン・ヘッセ「Glück幸福」 

ところで、ヘッセの訳詩をもとめてネット検索していたところ、B面4曲目の「Leb Wohl, Frau Welt(ごきげんよう、浮き世夫人よ―高橋健二訳)」のかれらの独自訳「さようなら世界夫人よ」を歌詞としてロックグループの「頭脳警察」が曲つくりをしていたのだそうで・・・。


さようなら世界夫人よ:頭脳警察


  ごきげんよう、浮き世夫人よ

  浮き世はこなごなに砕かれている
  かつてわたしたちは浮き世を大いに愛した
  今はもう死ぬことも
  それほどわたしたちをこわがらせない

  浮き世をさげすんではならない
  浮き世は色どりと野性にとんでいる
  古い古い昔からの魔力が
  今も変わらず、浮き世のまわりにただよっている

  感謝して別れよう
  浮き世の大きなたわむれから
  浮き世は楽しみと悩みを与えてくれた
  愛をゆたかに与えてくれた

  ごきげんよう、浮き世夫人よ
  また若くつややかにお化粧なさい
  わたしたちは、あなたの幸福にも
  悲嘆にも満ち足りた

    ヘルマン・ヘッセ(Leb Wohl, Frau Welt ごきげんよう、浮き世夫人よ―高橋健二訳)
  


ビトゥイーンBetween『Hesse Between Music』(1977)

Tracklist:
A1. Om Namo Buddhaya 4:10
Composed By - P. M. Hamel*
A2. Whistlin' 2:24
Composed By - R. Eliscu* , Tom Van Der Geld
A3. From Tom's Diary 1:20
Composed By - Tom Van Der Geld
A4. Glück 1:00
Arranged By - P. M. Hamel*
Composed By - Philip Nicolai
A5. Chinese Legend 2:47
Composed By - P. M. Hamel* , R. Détrée*
Sarangi - Peter Müller
A6. Suicide 10:41
Composed By - P. M. Hamel*
Sitar - Al Gromer*
B1. When You're Smiling 3:02
Composed By - Goodwin* , Shay* , Fisher*
Harpsichord - Tom Van Der Geld
B2. Zarathustra 2:13
Composed By - P. M. Hamel*
B3. Variationen Über "Eisenach" I - III 7:23
Composed By - F. Lehrndorfer* , P. M. Hamel* , R. Détrée*
Organ [Grand] - Franz Lehrndorfer
B4. Leb Wohl, Frau Welt 1:20
Arranged By - P. M. Hamel*
Composed By - A. Lohmann
B5. Govinda 6:50
Composed By - P. M. Hamel* , R. Eliscu*
Sarangi - Peter Müller
B6. Lachen, Lachen, Lachen 1:44
Composed By - Tom Van Der Geld

Credits:
Artwork By [Cover Painting] - Caspar David Friedrich
Bass - Gary Todd (2) , Yerzy Ziembrowski
Congas, Percussion - Charles Campbell
Design [Cover] - Günther Stiller
Drums - Holger Brandt
Engineer - Ulrich Kraus
Engineer [Assistant] - Gerda Koch
Guitar - Roberto Détrée
Keyboards, Voice, Tambura, Electronics - Peter Michael Hamel
Lyrics By - Hermann Hesse
Narrator - Gert Westphal
Oboe, Flute [Lotus] - Robert Eliscu
Producer - Joachim Ernst Berendt
Saxophone [Soprano, Tenor], Clarinet - Bobby Jones (2)
Vibraphone - Tom Van Der Geld

Notes:
Recorded June 1974. Co-produced by Bayerischer Rundfunk.
One-sided 12" lyrics sheet inserted.
Cover painting titled "Der Mönch am Meer" (1808/1810).


     この暗い時期にも、
     いとしい友よ、私のことばを容れよ
     人生を明るいと思う時も、暗いと思う時も、
     私は決して人生をののしるまい

     日の輝きと暴風雨とは
     同じ空の違った表情に過ぎない
     運命は、甘いものにせよ、にがいものにせよ、
     好ましい糧として役立てよう。

     魂は、曲がりくねった小道を行く
     魂の言葉を読むことを学びたまえ!
     今日、魂にとって苦悩であったものを、
     明日は、もう魂は恵みとしてたたえる

     未熟なものだけが死ぬ
     他のものには神性が教えようとする
     低いものからも、高いものからも
     魂のこもった心を養うために

     あの最後の段階に達してはじめて
     私たちは自己に安らいを与えることができる
     その境に到って、父に呼ばれつつ
     早くも天をみることができる

     ヘルマン・ヘッセ「An die Freunde in schwerer Zeit困難な時期にある友だちたちに」


ピーター・ミヒャエル・ハーメル、ビトゥイーンBetween関連投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/52409982.html ピーター・ミヒャエル・ハーメルらのグループ「BETWEEN」による『DHARANA』(1977)。非西欧的旋法によるエキゾチックな瞑想的メロディーの親しみやすいミニマル・ミュージック

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/53584613.html ピーター・ミヒャエル・ハーメル『NADA』(1977)身を横たえての陶酔没我、瞑想、涅槃へのモドキに恰好な音楽。