yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

山下洋輔『スパイダー』(1995)。<倦>み、<惰>すことなく創造的に変化に富んでいて、リリシズムとバルトークがチラつく無調でパーカッシヴ、セシル・テイラー相同の打鍵快走ぶりを聴かせている。

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[1063] FOURTH STEP @ SPIDER - YOSUKE YAMASHITA

              

たまにはジャズということもあるけれど、NHK・FMのジャズ(ロック)番組「セッション2010」の、なんともいたたまれない気持ちにさせる元気、覇気のなさ、よく出来ましたハナマルよろしくのインタープレイに、こんなこと続けていたらもうジャズも終わりだぜ~(ファンはオジン、オバン、ジャズスノッブばかり)といった暗澹の印象にケジメをと、ネット図書館で山下洋輔のアルバム『スパイダー SPIDER』(1995)を借りて鑑賞。検索リストにピアノ・山下洋輔とだけの表記だったので、てっきりソロピアノものと思って借り受けたのだけれど、トリオ、それもニューヨーク・トリオ(1988年結成)でのアルバムだった。というのもおよそ3年ほど前に≪山下洋輔『SAKURA』(1990)。サイドメンの一昔前の古臭いセンス。十年一日アメリカンジャズテイストで染め上げられた売れ線ジャズ。≫とタイトルし【山下洋輔個人はともかく、リズムセクション・サイドメンは一昔前の古臭いセンスで、どうしょうもない。はっきりいって、駄作と云っておこう。本当は駄じゃなく<惰>の字を当てたいのだけれど。アメリカンジャズの十年一日何の変化も面白味もない、しかし聴きやすさ、ノリだけは持ち合わせていると云った体の、それだけのアルバムだと、私には思える。これほどディフォルメの中途半端な洋輔も珍しい。】とクサしていたもので、手にして同じくニューヨーク・トリオのものと分かって、聴く前からなんだか気乗り薄だった。けれど、それは杞憂で、いい意味ではずれてくれていた。リズムセクション・サイドメンも山下洋輔のピアノに煽られて<惰>を打ち破る勢いを魅せている。山下洋輔のピアノも<倦>み、<惰>すことなく創造的に変化に富んでいて、リリシズムとバルトークがチラつく無調でパーカッシヴ、セシル・テイラー相同の打鍵快走ぶりを聴かせている。ここには若き山下洋輔プロトジャズ時代のパッションが円熟味をおびて息づいている。すべて自作曲なのだろうか、それゆえのおもしろさに満ちている快作といっておこうか。




山下洋輔『スパイダー』(1995)

1.キャッツ・ダンス Cats Dance
2.ピカソの逆襲 Revenge of Picasso
3.ワン・フォーM One for M
4.クワイエット・デイズ Quiet Days
5.フォース・ステップ Fourth Step
6.キッズ・イン・メモリー Kids in Memory
7.ダブルズDoubles
8.ストリーム Stream
9.スパイダー Spider