yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

白石美雪『ジョン・ケージ―混沌ではなくアナーキー』(2009)。「Happy New <Ear> !」何よりもまず「聴く人」だった。

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「できることはただ一つ、不意に聴くことである。風邪をひいたときにできるのが不意にくしゃみをすることだけなのと同じである。不意に聴いたり、不意にくしゃみをしたりするように、偶然に生じる現実を奥の深いものとは思わないという考えが、ヨーロッパの思想によってもたらされたのは不幸なことである。」(ジョン・ケージ

ジョン・ケージは語りたくなる作曲家である。・・・」(白石美雪「ジョン・ケージ―混沌ではなくアナーキー」)

イメージ 2確かにそうだ。肯定するにせよ、否定するにせよ。しかし<音>をそれ自体として聴くこと、耳そばだてる人もまた少ない。音楽を自己表現と捉える事はケージからは絶望的に遠い。不確定性、偶然性に身をまかせ己を放棄する。自我の、自己心象表現の入る余地は彼の音楽革命にはない。ひたすら音を聴き、実践することだ。物質の振動するところすべてに音はその存在をしめす。そのまったき受容実践に新しき自己変革としての音楽ははじまる。身を大いなるものへ委ねる。
音楽学者で評論家の白石美雪(しらいし みゆき、1958 - )著『ジョン・ケージ―混沌ではなくアナーキー』をネット図書館で借り受けた。第20回吉田秀和賞受賞のよし。ブックデザインも秀逸。

「今日、音楽が何であるのか?芸術が何であるのか?を知ることは、実にむつかしい。わたしは、今日では、物事が何であるかは知らずにおいて、物事が真になんであるかを経験をとおして見出していくほうが、より稔が多いと思う。」 ジョン・ケージ

至極もっともなまじめな自助努力が事態をますます悪くさせている  ジョン・ケージ

「あたらしい耳、おめでとう! Happy New Ear !」と書いたケージは、何よりもまず「聴く人」だったのである」(白石美雪「ジョン・ケージ―混沌ではなくアナーキー」)

「わたしは聴く人になったのである」(ジョン・ケージ


    蕭條たる三間の屋       
    終日 人の観るなし
    独り座す 閒窓の下       
    唯聞く落葉の頻りなるを

        (蕭條・しょうじょう=ひっそりともの寂しいさま)
      

    宇(庵)を結ぶ碧がんの下(もと)
    薄言(いささかここ)に残生を養う
    瀟灑(しょうしゃ)、膝を抱いて座す
    遠山、暮鐘の声


    冬夜長し 冬夜長し
    冬夜悠々 何れの時か明けん
    燈に焔なく 爐(ろ)に炭なし
    只聞く 沈上 夜雨の声
 

    寒爐(ろ)深く 炭を撥(か)き
    孤灯 さらに明らかならず
    寂寞(せきばく)として半夜を過ごし
    ただ遠渓の声を聞く


    秋夜 夜まさに長し
    軽寒 わがしとねを侵す
    已(すで)に耳順の歳に近し
    誰か憐れむ幽独の身
    雨歇(や)んで滴り 漸(ようや)く細く
    虫啼いて 声愈(いよい)よ頻りなり
    覚めて言(ここ)に寝ぬる能(あた)はず
    枕を側(そばだ)てて清震(せいしん)に到る


人里はなれ、森閑とした庵にて耳澄まし全身音ともなり音の中へと入ってしまう、まさに音自体となり、音を聞く良寛。「花、無心にして蝶を招き、蝶、無心にして花を尋ぬ」「心、境、倶(とも)に忘ず」の良寛はまさしく≪眼の人ではなく、耳の人と言ってよい≫(唐木順三良寛筑摩書房


【死ぬ最後の朝も、いつもの様に事務所の雑用をこなしていた・・・】(WIKI)


Cage: "Indeterminacy", Part One


One evening when I was still living at Grand Street and Monroe,
Isamu Noguchi came to visit me.
There was nothing in the room no furniture, no paintings.
The floor was covered wall to wall with cocoa matting.
The windows had no curtains, no drapes.
Isamu Noguchi said“An old shoe would look beautiful in this room.”
・・・
・・・
(time 5.00-)イメージ 3
It was after I got to Boston that I went into the anechoic chamber
at Harvard University.
Anybody who knows me knows this story.
I am constantly telling it.
Anyway in that silent room I heard two sounds
one high and one low.
Afterward I asked the engineer in charge
Why if the room was so silent I had heard two sounds.
He said“Describe them.”I did.
He said“The high one was your nervous system in operation.
The low one was your blood in circulation.”
・・・
・・・

イメージ 4John Cage, "Plexigram",lithograph,1969