『「戦争」が生んだ絵、奪った絵』。
海ゆかば(Umi Yukaba)~If I go away to the sea~ Japanese military song
≪「戦争」を生き抜いた画家は、今度は戦争体験と戦わねばならなかった。
戦争の激浪に拉致された画学生、画家たちは、沈黙を強いられることとなった。・・・≫(『「戦争」が生んだ絵、奪った絵』より)
戦争の激浪に拉致された画学生、画家たちは、沈黙を強いられることとなった。・・・≫(『「戦争」が生んだ絵、奪った絵』より)
世代的に、わたしの親と同じということもあって、それからくる思い入れの所為か胸ざわつかせる。
<泣きたいやつ>
おれよりも泣きたいやつが
おれのなかにいて
自分の足首を自分の手で
しっかりつかまえて
はなさないのだ
おれよりも泣きたいやつが
おれのなかにいて
涙をこぼすのは
いつもおれだ
おれよりも泣きたいやつが
泣きもしないのに
おれが泣いても
どうなりもせぬ
おれより泣きたいやつを
ぶって泣かそうと
ごろごろたたみを
ころげてはみるが
おいおい泣き出すのは
きまっておれだ
日はとっぷりと
軒先で昏(く)れ
俺ははみ出て
ころげおちる
泣きながら縁先を
ころげてはおちる
おれのなかにいて
自分の足首を自分の手で
しっかりつかまえて
はなさないのだ
おれよりも泣きたいやつが
おれのなかにいて
涙をこぼすのは
いつもおれだ
おれよりも泣きたいやつが
泣きもしないのに
おれが泣いても
どうなりもせぬ
おれより泣きたいやつを
ぶって泣かそうと
ごろごろたたみを
ころげてはみるが
おいおい泣き出すのは
きまっておれだ
日はとっぷりと
軒先で昏(く)れ
俺ははみ出て
ころげおちる
泣きながら縁先を
ころげてはおちる
泣いてくれ
泣いてくれ
泣いてくれ
(石原吉郎『斧の思想』より<泣きたいやつ>)
≪極限状況は、およそどのような教訓からも自由であるというのが、私が得た唯一の「教訓」である。人は教訓を与えられるために、極限状況へ置かれるのではない。人はそこでは、そのまま状況におしつぶされるか、かろうじてそこから脱出しうるかのいずれかになる。もしわずかに脱出しえたにせよ、帰って来たものは、何らかの形ですでに、人間としてやぶれ果てた姿だという事実を忘れるべきでない。一人の英雄もそこからは帰ってこなかったのである。≫