yuki-midorinomoriの日記

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柄谷行人『世界史の構造』(岩波書店)。世界史の構造の壮大根底的な読み換えのこころみ。目からウロコ?のさまざまな歴史諸事象、諸説の読解、知見の痛快。

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どうにも了解し難い現代世界の政治経済の動向。機軸なく不安混迷の度が増すばかり・・・。これは誰しもが思っていることではないだろうか。世に流布するまことしやかな多くの言説の賞味期限の何と儚いことか。≪柄谷行人著『世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて』岩波新書)。世界的諸問題、アポリアへの漸次解決の方途とは。≫とタイトルして投稿したのは3ヶ月前のことだった。≪ソ連崩壊による東西冷戦の終結。人類平和の希求の曙であったはずの社会主義政治経済の完全な現実的破綻。社会主義とは到底言えぬ共産党一党独裁の<国家資本主義>政治経済体制で昇竜の勢いの、どうにも理解し難い社会主義?中国の台頭。世界いたるところで止まぬ戦争、テロ。グローバル資本主義経済のもたらす対外・対内経済格差の激甚と過剰資本の生産消費がもたらす環境破壊・・・。まさしく人類は破滅への道を歩んでいるとしか思えない。このような一般共通認識に解決の糸口をもたらす思想的理路はあるのか?。資本と国家への新たな根本認識の転換なくしては先のような諸問題の解決の端緒すら見えてこないのではないか・・・。こうした切実な問題への思想的提言がなされている啓蒙の書といえる。
従来のマルクスの生産概念による世界了解から交換概念、消費を軸としての批判的な検討。交換様式〔互酬(贈与と返礼)、再分配(略取と再分配)、商品交換(貨幣と商品)、そしてXとしての第4の交換〕のあり方として社会、歴史を、また商品、資本、国家を読み解いていく。まさに斬新の歴史、社会読解の読書だった。

さて、つぎは、これらを本格展開した大著「世界史の構造」(岩波書店刊)へと挑戦だ。いつになるか分からないけれど・・・。≫

あまりにネット図書館の予約者が多く、その要望に応えるためにか所蔵数が増やされたようで、マッサラないまだ未読とおぼしき柄谷行人の大著『世界史の構造』(岩波書店)を借りることができた。固く錆付いた頭を叩きながら、連休明けの返却期限をにらみつつ半醒半睡!でどうにかこうにか読了した。

≪狩猟採集の未開社会から、帝国の時代を経て、近代の国民国家に至る≫世界史の構造の既定の生産様式概念による了解から、交換様式(〔互酬(贈与と返礼)、再分配(略取と再分配)、商品交換(貨幣と商品)、そしてXとしての第4の交換〕概念による、壮大根底的な読み換えのこころみ。目からウロコ?のさまざまな歴史諸事象、諸説の読解、知見の痛快は新機軸ゆえの結実なのだろう。

<価値形態(関係体系)論>の哲学、そして交換様式。贈与・互酬交換の古くて新しい包摂蘇生展開としてのアソシエーション(協同組合 association)。

現代のグローバリゼーションのドンズマリを帰結した<資本=ネーション=国家>を支え貫徹する「商品交換(貨幣と商品)」を突き破る「Xとしての第4の交換」。古層(基底)として人間(共同体)社会の本源に在る贈与・互酬交換の古くて新しい包摂蘇生。<資本=ネーション=国家>に至る人間史において個々に分断された人間の本源的回復・・・。

繰りかえそう≪まさに斬新の歴史、社会読解の読書≫だった。分かったとは到底どころかこれっぽちも言えないが。



ほとんどの批判諸氏の論説は、<価値形態(関係体系)論>の(柄谷)哲学への了解が不足しているように思える・・・。だからというべきか、重箱の隅をつつくような批判以上に出ない。

マルクス、その可能性の中心』1973年(1978年出版)が、柄谷行人の思想的宣言の書でなかっただろうか。それは、まさしく「資本論」<価値形態(関係体系)論>の徹底した読解だった。

その成果がこの大著『世界史の構造』としていまようやく結実したということなのだろう。




贈与・互酬交換――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/49251035.html 辛辣、毒舌、天の邪鬼。切れ味鋭く常識に抗い深い、内田樹×養老孟司両者の対談「逆立ち日本論」(新潮選書)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/49251035.html 経済・社会哲学で人間存在の本源的<暴力>という独特の視覚から思想的営為を重ねてきた今村 仁司の訃報に思う。