yuki-midorinomoriの日記

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松沢哲郎『想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心』。人間とは何か。

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今ここの世界を生きているから、チンパンジーは絶望しない。「自分はどうなってしまうんだろう」とは考えない。たぶん、明日のことさえ思い煩ってはいないようだ。
それに対して人間は、容易に絶望してしまう。でも、絶望するのと同じ能力、その未来を想像するという能力があるから、人間は希望をもてる。どんな過酷な状況のなかでも、希望をもてる。
人間とは何か。それは想像するちから。想像するちからを駆使して、希望をもてるのが人間だと思う。

      松沢哲郎「想像するちから―チンパンジーが教えてくれた人間の心」

【霊長類学というと、サル学だと思う人が今でも非常に多いが、それは間違いだ。「霊長類=サル」ではない。霊長類は、人間を含めたサルの仲間であり、人間が含まれる。・・・ヒトという生き物が、一科一属イメージ 2一種と思われがちだが、それは違う。動物分類学上、ヒト科は四属というのが現在の通例である。つまり、ヒト科ヒト属(ホモ属)だけでなく、ヒト科チンパンジー属(パン属)、ヒト科ゴリラ属、ヒト科オランウータン属の四属である】厳密に言うとこうなのだそうだ。だから本書では、チンパンジーの単位は匹とか頭ではなく、人と呼称される。
進化上、祖先を同じくし枝分かれしたチンパンジーを観察することで「人間とは?」、「こころとは?」と問いかける。比較認知学。
いったい「見る」とか、「わかる」とか、「知る」とはどういうことなのか?。徹底した実験観察することから得る知見の確かさ。論理をこねくり回し、文献をつつきまわす机上の学問にはない、言葉、概念のリアリティーの強さ。

ふだんから、ココロ、意識、脳、認知、言語・・・等々の人間の諸相に興味を持っている人間には、実験観察に裏付けらた平易なことばで語られた一般向け啓蒙の書といえる。

あとがきに「遺書のつもりで書いた。」とある。それほど心血注いだ長年の研究の感慨が、そう言わせたのだろうか。

松沢哲郎『想像するちから――チンパンジーが教えてくれた人間の心』

ネット図書館で借りての読書だったのだけれど、びっくりするほど多数の予約者数だった。予約者30数人!(与えられた貸出閲読期間はひとり2週間)いつ順番がまわってくるのだろうと思っていた。所蔵数を増やしたのだろう。







チンパンジーはいかに聡明か松沢哲郎博士に聞いてみよう1/2