yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

スクリャービン、ルイジ・ノーノほか『プロメテウス ひとつの神話のさまざまなる変奏』。人間に火=文明を与えたプロメテウス――永久に旅するもの・・・。

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Claudio Abbado dirige la suite del Prometeo di Luigi Nono n.3

               

               Luigi Nono - Prometeo - Tragedia dell'ascolto (1984/85)
               http://www.youtube.com/watch?v=-HePSJCCGP4

日本の神話、古事記すら満足に読んだこともなく、ギリシャ神話もないものだけれど、ネット図書館で借り受けた『プロメテウス ひとつの神話のさまざまなる変奏』とあるように、あちらでは、人間を語るうえでのすこぶるの題材であるらしい。人間を神に似せて造り、魂と生命を吹き込み、火を与え文明をもたらした創造の神とのことだけれど(それでよかったのかしら)。WIKIによると【プロメーテウス(Promētheus)は、ギリシア神話に登場する神で、ティーターンの1柱。エピメーテウスの兄である。その名は、pro(先に、前に)+metheus(考える者)で、「先見の明を持つ者」「熟慮する者」の意である。一説によると、人間を創造したのはプロメーテウスだったという(アポロドーロス『ギリシア神話』第1巻VII:1)。】

斯く神話のプロメーテウスを時代、社会背景、思想を異にする各時代の作曲家が解釈し音響造形した作品集ということなのだろう。

なんといっても、現代音楽の作曲家、それも反体制、共産主義思想の信奉者ルイジ・ノーノの晩年の長大な作品『プロメテウス(組曲1992)』の作品、ただし抜粋ヴァージョンだけれど、それが聴けるとあって借り受けたのだった。

ベートーヴェンやリストのプロメーテウスをめぐる作品も、悪くはないが、なんといっても、スクリャービンの『交響曲第5番「プロメテウス(火の詩)」』の、その音色の霊妙、神秘さに交感し悦楽する異端の音響世界の壮麗は官能的ですばらしい。

そしてこのアルバムの目玉、聴きものといえばノーノの『プロメテウス(組曲1992)』。始原とも終末とも定かでない、ひたすら成ることの胎動、うめき、混沌に遥動する緊張感湛えた持続の意志。


    永久に旅するもの――プロメテウス




以下は、作品中に詠われているテキストから。

     ≪プロメテウス≫

     三つの声(a) ベンヤミン/カッチャーリ

     
     聴け。

     一瞬のときをつかめ。

     まばたきのように

     閃く瞬間を。

     昨日のことは語るな。

     きよう

     太陽が曙の光を幾すじもなげかける。

     ここで

     密やかなハーモニーがふるえる。

     高まる危機に

     砂漠のただ中に

     君の翼をひろげよ。

     息の流れに

     密やかなハーモニーが引き込まれるように。

     時おり不意に

     天使たちが現われる。

     水晶のように澄んだ朝に

     緋色の翼をはためかせながら。

     ここで

     時のはかりが撓わになるのだ。

     聴け。




     第2の島(b) ヘルダーリン

     しかし、我々に

     安息の地などありはしない。

     病める人々は

     当てもなく

     逝き、倒れる

     岩から岩へと跳ねて

     未知の世界へ向かう

     水のように。

     ひとつは人間の

     ひとつは神の

     神の属

     不幸な兄弟たちよ







スクリャービンルイジ・ノーノほか『プロメテウス ひとつの神話のさまざまなる変奏』


1. プロメテウスの創造物op.43~抜粋(ベートーヴェン)
2. 交響詩第5番「プロメテウス」(リスト)
3. 交響曲第5番「プロメテウス(火の詩)」(スクリャービン)
4. プロメテウス(組曲1992)~抜粋(ノーノ)
  3つの声(a) (ベンヤミン/カッチャーリの『遊戯の達人』の テキストによる)
  第2島:(b) ヘルダーリンヘルダーリンの『運命の歌』のテキストによる)



Scriabin, Prometheus: The Poem of Fire, Op. 60 - Martha Argerich