yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ショーソン『愛と海の詩 Op.19』。詩と管弦楽・・・詩の意味がわかれば音楽の興も増す。

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いま思えば、ラジオから流れていた曲


【「愛と海の詩」                ショーソン作曲
                      (27分38秒)
           (メゾ・ソプラノ)スーザン・グレイアム
                  (管弦楽)BBC交響楽団
            (指揮)ヤン・パスカル・トルトゥリエ
  <Warenr Classics WPCS-11878>】


に印象して


http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/64605656.html ショーソン『愛と海の詩 Op.19』。色彩あふれ、その織りなす流麗な美しさと余情。


と投稿したのは7月21日。祝日「海の日」だった。そんな日があったん?だ。7月のハッピーマンデーとか。大いに遊んで(消費して)ください・・・ということなのでしょう。

それはともかく、この件の印象した曲の入ったCDがネット図書館所蔵されているのを知り、放送後予約申し込みをしていたのだけれど、今頃になって手にすることとなってしまった。

遅きに失したというものの、さいわいにしてそのCD同梱の解説書に歌詞の訳が在ったのでこれはいい機会ということで再度の投稿となった。

歌詞の内容がわかれば、詩と管弦楽の織りなすゆたかで美しい音楽鑑賞も興味深く倍加した印象を得るのではと・・・さて如何なものでしょう。



Susan Graham: The complete "Poème de l'amour et de la mer Op. 19" (Chausson)



ショーソン:愛と海の詩作品19(詩:モーリス・ブショール Marice Bouchor)

水の花(La Fleur des eaux)

大気は香しいリラの香りにみちあふれ、
石垣の上から下までいっぱいに咲き乱れた
花々は、あたかも女の髪の匂いにも似て。
海は輝きわたる太陽にいまや燃えつくさんばかり、
そして波はまばゆくきらめきながら、
細やかな砂に口づけに寄せてはかえす。

おお、彼女の眼の色を映す大空よ、
花咲くリラの中を歌いながら吹きわたり、
かぐわしい香りをただよわせるそよ風よ、
彼女の服を濡らす小川の流れよ、
おお、彼女のかわいらしい足もとで
身をふるわせる、緑の小道よ、
私をいとしい恋人に会わせておくれ!

あの夏の朝、私の心は起き上がったのだった。
何故なら、ひとりのすてきな女の子が、浜辺で、
そのまぶしいばかりの視線を私の上にめぐらせ、
やさしくはにかんだ風情で、私にほほえみかけてきたのだった。

青春と恋によって姿を変えられたお前は、
まるで物々の魂のように、私の前に現われたのだ。
私の心はお前の方へ飛んでいき、お前はそれを
しっかりとつかんで放さなかった。そして、
半ば雲にかくれた空から、私たちの上に、ばらの花の雨が降りおちた。

ああ、今や別れの時を告げようとする響きの
何というつらさ、そっけなさ!
浜辺に打ち寄せてはかえす海は、まるで嘲るように、
今が別れの時だということなど、
殆ど気にもとめてはいなかった。

鳥たちは、翼をひろげて、何だかうれしそうに
淵の上を飛んでいく。
輝きわたる巨大な太陽に照らされて、海は緑色に光り、
私は輝く大空を見つめながら、ただ黙って、
血を吐くよラな思いをかみしめるばかり。

自分の生命が、波の上を次第に遠ざかって
いこうとするのを、じっと見つめて。
私のたったひとつの魂は奪い去られてしまったのだ。
だが、波の陰うつなざわめきが
私のすすり泣く声をかき消してくれる。

いったい、この残酷な海は、いつの日か
彼女を再び私の心に連れ戻してくれるだろうか?
私の眼差しはじっとそこに注がれたまま。
海は歌い、風はまるでからかうように、
私の心の苦しみををあざ笑う。



愛の死(La Mort de l'amour)

やがて、喜びあふれる青色の島が、
岩々の間から、私の前に姿を現わし、
静まりかえる水面の上で
水蓮のようにただようだろう。
紫の水晶のような海を渡って、
小舟はしずかにすべり行き、
私は、やがて、
さまざまな追憶に、
喜びや悲しみにふけるだろう。

風に枯葉が舞いまわっていた。私の思いもまた、
夜の闇の中で、枯葉のように舞いまわる。
霧のしずくをこぼす、無数の金色のばらの花が、
まっ暗な空にあんなに輝いていたことはかつてなかった!

枯葉は、しわくちやになって、金属的な音を立てながら、
恐ろしいワノレツを踊っていた。
そして、星空の下で、うめくように、
過ぎ去った愛の名伏しがたい恐怖を物語っていた。
月の口づけを受けて銀色に光る巨大なぶなの樹々は
まるでお化けのようだった。そして私は、愛する恋人が
奇怪な微笑をうかべるのを見て、血も凍る思いだった。
私たちの顔はまるで死人のように蒼ざめていた。
そして、おし黙ったまま、彼女の方に身をかがめて、
彼女の大きな瞳の中に読みとることが出来たのは、
そこに書かれたあの宿命的な一語だった――「忘れ去ること」!

リラの花咲く季節も、ばらの花咲くときも、
この春には二度と戻ってはこないだろう。
リラの花咲くときも、ばらの季節も、過ぎ去ってしまったのだ。
カーネーションの花咲くときも、また
風向きは変わり、空はどんよりと曇っている、
私たちももはや、リラの花や美しいばらを
摘みに、喜び勇んで行くことはあるまい。
春の季節は悲しく、花ひらくことも出来ないのだ。
ああ、過ぐる年、私たちを晴れやかに照らしにやってきてくれた
あの年の、喜びにみちたやさしい春よ、
私たちの愛の花は、もはやすっかり色あせてしまったのだ、
ああ!おまえの□づけでさえ、その花を
目ざめさせることが出来ないとは!
お前、いったいどうしたというの?花は開かず、
楽しげな太陽もなく、さわやかな日陰もないとは!
リラの花咲く季節も、ばらの花咲くときも、
死んでしまったのだ――私たちの恋とともに、永遠に。

(歌詞邦訳、同梱の解説書より)