yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

ブーレーズ、シェルシ、ブラウンの名品弦楽四重奏曲

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ブーレーズが優れているのか、私の感性と波長が合っているだけなのかどちらか分からないが、すばらしい作品である。このアルバムの弦楽四重奏「LIVRE POUR QUATOUR」(1949)part1a,1b,2,5、それも収録されている1,2のパートはパリ、5はハンブルグでおのおのパレナンとハーマンというように演奏グループが違っている。何故だかは勉強不足で知らない。たぶんパート5とそれ以外はかなり違う印象を与えることを思えば、作曲時期の違い、書法の違いがあるのではないか。鋭い対比に満ちた印象が薄れ、甘い匂いの流れる様な趣を感じさせるパート5である。それはともかく、ウエーベルン以降のセリーによる優れた弦楽四重奏作品であることは間違いないだろう。ウエーベルン的世界の濃厚な、きわめて凝縮され引き締まった冷厳とまで言いたくなる音の世界である。鋭い切っ先の一点に時空を切り開くかごとくの音の煌めきは、堪らなく美しいものである。ウエーベルンを超えるものではないとするむきもひょっとして有るかもしれないが、私には無調セリーの極点に位置する成果でこそあると思える。そうした意味で名曲に挙げることためらわない。B面1曲目は前のブログで採り上げた「貴族の末裔であり財産に恵まれたため、作曲以外の仕事はほとんどせず趣味人的作曲活動をマイペースで行」(WIKIPEDIA)っていた、イタリア孤高の隠遁に韜晦する現代音楽作曲家ジャチント・シェルシGIACINNTO SCELSI(1905)の「QUARTET NO.4」(1964)である。彼の作風は「一つの音の倍音成分の変化や、近接する周波数によって発するうなりを」テーマに音色の特異な世界を展開したその作品群に見られる、古代よりの、心を揺さぶる精神性を感じさせる独特の<うなり>の倍音音響世界といえよう。この「QUARTET NO.4」ではそうしたサウンドというより、ルチアノベリオの「分配的トレモロ」なる特殊奏法での複層が放つ、豊かな響きに満ちあふれた音色をもつ流れるような一種クラスターの趣を持つ音響のさきがけとなる作品といえるだろうか。2曲目はジョンケージ、モートンフェルドマンらとセリー音楽以後のアメリカの前衛音楽活動をともに展開していたアールブラウンEARLE BROWN(1926)の「STRING QUARTET」(1965)である。
もうこの年次まで来ると、才能もさることながら確固とした書法の完成というにふさわしい弦楽四重奏作品となっている。
特殊奏法を駆使しての煌びやかで切っ先鋭い音の弦楽世界は、ポールズーコフスキーをメンバーとする演奏グループNEW YORK STRING QUARTETのメリハリのある真に素晴らしい演奏もあってか、
伸びやかさと、鋭さがバランスよく小気味良いほどの仕上がりとなっている。
この作品も幾度も演奏される代表作として完成度の高さを示していると私には思われる。
New Music for String Quqrtetと銘打たれたアメリカ、MAINSTREMレーベルの現代音楽シリーズの一枚。
制作年度が分からないが73,4年だろう。たぶんブーレーズ弦楽四重奏「LIVRE POUR QUATOUR」がどんなものか聴きたくて手にしたのだろう。当時発注してから3、4ヶ月の待ちはざらであった。待つという時間の流れは今思うといいものであった。