yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

戦後復興の曙光に開放高揚する精神。諸井三郎1951年作曲の『交響曲第4番』

イメージ 1

あまりにも時代の現実に引きつけすぎての鑑賞であるのかもしれない。今回取り上げる諸井三郎(1903-1977)の『交響曲第4番』は敗戦後6年という今なお復興途上での作品である。今まで拙ブログにて『交響曲第2番』(1938)および『交響曲第3番』(1944)を取り上げ鑑賞してきた。この三曲を聴いてきての感想は、やはり太平洋戦争開戦直前の38年に作曲された『交響曲第2番』をわたしは、彼の最も充実した完成度の高い作品としてあげることに躊躇しない。その次に指屈するのは長期戦での厭戦疲弊に敗戦濃厚、死の影が国民に覆いかぶさってくる44年に作曲された悲壮さえ感じさせる『交響曲第3番』であり、次にくるのが戦後復興の曙光に開放高揚する精神充溢した51年作曲の『交響曲第4番』ということになるだろうか。これは不思議である。物質経済的貧窮、政治イデオロギー崩壊による価値転倒。そうした観念幻想世界の精神混乱にあったにせよ、ともかく、少なくとも精神の自由を得ての創作とあれば伸びやかな精神の充溢に芸術は輝く結晶を結果すると思っても不思議はないだろう。しかし私のシロウト印象からする判断は逆であった。だからといって戦前戦時という重苦しい、少なくとも抜きんでたインテリである彼らの緊張が、一層の充実を与えたといえるのかどうか、それは分からない。B面の、『弦楽六重奏曲』は私が傑作と印象する『交響曲第2番』とほぼ時同じく1939年の作である。この優れた重厚な弦楽作品がそのような時期に作曲されているのもそうした意味でいっそう興味深いことではある。こうした諸井三郎の諸作品をいまだ耳にする機会の少ないことは、それらがよく言われる<絶対音楽>であるからなのだろうか。ベートーベンを熱心に聴く人ならそれはあたらないだろう。ベートーベンに耳傾けるならぜひ諸井三郎の作品を聴いてほしいものだ。こうした優れた営為が確かにあったのだ。それも不幸な時代といわれるなかで。



日本の戦後復興(Httpから映像・音響室選択、検索広場へクリックすると貴重なアーカイブ映像が見れます)―
http://www.showakan.go.jp/

諸井三郎『交響曲第2番』(1938)マイブログ―
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/38577545.html

諸井三郎『交響曲第3番』(1944)マイブログ―
http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/40759110.html