yuki-midorinomoriの日記

イメージを揺さぶり脳をマッサージする音楽

間宮芳生(みちお)『無伴奏チェロ・ソナタ』(1968-69)、「無伴奏ヴァイオリンソナタ」(1970)。≪武骨で剄い美しさ≫。矜持、気骨の美学。

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grave of the fire flies part 9(火垂るの墓)音楽:間宮芳生、挿入歌「はにゅうの宿

       

県立青森中学校、ついで終戦の年に海軍兵学校に入学。・・・「兵学校に行くときは、音楽だけじゃなく、人生を一ぺん放棄したようなもんさ。みんなそういう感じだったでしょう。」(秋山邦晴「日本の作曲家たち・上」音楽の友社より)

イメージ 2きょうは、日本のバルトークと言われもする間宮芳生(みちお)の傑作「無伴奏チェロ・ソナタ」(1968-69)と特異な名品「無伴奏ヴァイオリンソナタ」(1970)の2作品が収められたアルバムを取り上げよう。「無伴奏チェロ・ソナタ」はすでにカップリングのアルバムで≪これは、文句なしに日本民族性の、優れた音楽上での表出された作品といえるだろうし、矜持でさえある。ここには面映い<美しい国>は無い。それよりも、生き生きとして情動する確たる生の賛歌がそこにはある。<美しい国>というより日々営まれる民俗生活の土台、社稷の共同性、その力つよき歌であるといっていいのだろう。≫と記した。文楽太棹三味線の如くに土俗の声が唄が洗練を放棄して力強く骨太に奏でられる。武骨というより矜持、気骨の美学の結晶と言っておこうか。あたりまえの如く、時代を代表する作品として後々まで幾度となく演奏される傑作といい募っておこう。ところでもう一曲の「無伴奏ヴァイオリンソナタ」には次の創作背景をもっているそうだ。

≪1967年の10月にきいた、ニュージャズの指導的人物、オーネット・コールマンの東京でのコンサートは、ぼくに忘れ難い印象を残した。中でも彼のヴァイオリンの演奏が。同じようにニュージャズの代表的な存在とされる、セシル・テイラーや、その年に世を去ったジョン・コルトレーンなどに比して、コールマンの音楽は、より理知的で客観主義的であるといわれる。だが、ヴァイオリンを弾いたとき、ぼくは、「冷徹なオーネット」とは異なった面に出会って、強くひきつけられた。オーネットの音楽は“燃え”た。右手にヴァイオリンを持ち、弓を左手にガッとわしずかみにして、ギリギリきしるように弦をひきこするその姿の中に、ヨーロッパの伝統の中で完成されたこの優雅な楽器を、ヨーロッパの伝統から遮二無二ひきちぎって来て、何がなんでも自分の表現のために使いきるのだという、攻撃的な意志を感じた。(実はその後に知ったところでは、彼は左ききであるらしい。)そのとき以来、ぼくの中に新しいヴァイオリンのための「ソロ・ソナタ」のイメージが発酵しはじめた。≫(間宮芳生

この作曲家のジャズへの熱い眼差しは、つとに聞き及んでいたけれど・・・。先にも言ったけれど突き放した洗練のその武骨と気骨のヴァイオリンは軋みを美学とし、民の積年の生の声とする。まことに軋む特異な音色にこそ歴史を貫く民俗の実相があるがごとくに。
≪武骨で剄い美しさ≫。




間宮芳生関連、投稿記事――

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/49288158.html 大衆音楽形式の伸びやかさへの羨望のあらわれなのだろうか。間宮芳生(みちお)『ヴァイオリン、ピアノ、打楽器、コントラバスのためのソナタ』(1966)ほか。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/49115849.html <地と血>の特殊を包摂した普遍的な人間のエモーショナルな緊密な響き。間宮芳生(みちお)の『セレナード』(1971)と『9人の奏者のための協奏曲』(1972)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/47125015.html 生き生きとして情動する確たる生の賛歌、間宮芳生の『無伴奏チェロ・ソナタ』(1968-69)ほか。堤剛独奏の『現代日本チェロ作品集』(1971)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/45710658.html 武骨で剄い美しさ。<意志力>が響く間宮芳生(みちお)の『ピアノ協奏曲第2番』(1970)と『ピアノソナタ第2番』(1973)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/45254384.html 矢代秋雄(1929-76)『ピアノ協奏曲』(1967)。三善晃(1933-)『チェロ協奏曲』(1974)。間宮芳生(みちお)(1929-)「『ヴァイオリン協奏曲』(1959)。

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/37535192.html 武満徹と同世代の傑れた作曲家、間宮芳生『オーケストラのための2つのタブロー65』と松村禎三交響曲・1965』

http://blogs.yahoo.co.jp/tdhdf661/37389463.html 松村禎三(1929)間宮芳生(1929)三善晃(1933)の62・63年の輝くばかりの弦楽四重奏曲