yuki-midorinomoriの日記

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アントン・ウェーベルン『Boulez conducts Webern, Vol. 2』。師のシェーンベルクから巣立ってゆく時期の作品。甘美で濃厚艶やかなロマンに彩られた響きは壮麗ですらある。

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Anton Webern, six pieces for orchestra op.6

           


私がヴェーベルンで愛するのは、たぶん、この音楽の純潔さ、それから、その姿の端麗さであろう。この点でいえば、これは、私の好んであおぎみる芸術の星座のなかで、モーツァルトハイドンの中間に位置している。(「私の好きな曲」吉田秀和

イメージ 2拙ブログ開設間もない頃に、ブーレーズが揮ったウェーベルン全集、LP4枚組みを≪アントン・ウエーベルンの研ぎ澄まされた無調の美≫とタイトルして草々に取り上げている。それほどに私にとっても思い入れの強い作曲家といえるだろう。私にとって、まずいっとうに現代音楽といえばクセナキスであり、ウェーベルンだった。師のシェーンベルクよりも私には重要な作曲家だったのだ。余分なものが削ぎ落とされ、鋭敏に感性研ぎ澄まされた冷たく厳しい音の世界が光芒放っていたのだった。凝縮された響き。その取り上げたブーレーズ盤は1978年リリースのもので、収録されているほとんどが70年を挟んでの時期の録音だった。で、今日取り上げる図書館ネット予約借受のブーレーズの『Boulez conducts Webern, Vol. 2』は収録が1990年以降の再録ものであるということで、聴いてみた。聴き較べと云うより、先の1978年リリース盤は全集と銘打っているものの洩れている作品も多く、またそれ以降に発掘された作品も多少あるとのことで、それを期待しての借受だった。このCDではわずか2作品の新収録でしかなかったけれど。今回のCD鑑賞で思ったことは、無調点描、寡黙冷厳といったこちらの勝手なイメージとずいぶん違う、後期ロマン派的な濃厚な美意識の響きが美しく鳴っていることだった。ま、それを意識しての選曲といえば言えるのかもしれないが。1910年以前の作品というからアントン・ウエーベルン(Anton (von) Webern, 1883 - 1945)の典型、フォルムを築く以前の若き日の作品、師のシェーンベルクから巣立ってゆく時期の作品にねらいを定めての作品集と言うことなのだろう。甘美で濃厚艶やかなロマンに彩られた響き(師のシェーンベルクもそうだったけれど壮麗といってもいいくらい見事なものだ)にウェーベルンもこの時期浸っていたのだということを知るうえでは、これはこれで狙いは当たっているのだろう。後期ロマンの濃厚なウェーベルンを聴かせてもらいましたといったところだ。

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ウェーベルンⅡ ブーレーズ 
『Boulez conducts Webern, Vol. 2』

収録曲――
1. Passacaglia For Orchestra, Op. 1 (1908)
2. 5 Movements Op. 5: I. Heftig bewegt (1909)
3. 5 Movements Op. 5: II. Sehr langsam
4. 5 Movements Op. 5: III. Sehr lebhaft
5. 5 Movements Op. 5: IV. Sehr langsam
6. 5 Movements Op. 5: V. In zarter Bewegung
7. 6 Pieces For Orchestra Op. 6: I. Etwas bewegte Achtel (1909)
8. 6 Pieces For Orchestra Op. 6: II. Bewegt
9. 6 Pieces For Orchestra Op. 6: III. Zart bewegt
10. 6 Pieces For Orchestra Op. 6: IV. Langsam. Marcia funebre
11. 6 Pieces For Orchestra Op. 6: V. Sehr langsam
12. 6 Pieces For Orchestra Op. 6: VI. Zart bewegt
13. The Musical Offering: Fuga (Ricercata) a 6 voci (1934-5)
14. German Dances Op. posth. D 820: No. 1 - No. 2 - No. 3 In A Major (1931)
15. German Dances Op. posth. D 820: No. 4 - No. 5 - No. 6 In B Flat Major
16. Im Sommerwind (1904)


Anton Webern(作品がダウンロードして聞けます、興味のある方はぜひ利用してください)
http://www.antonwebern.com/